夜明けの吐息色 #新色できました
都会の喧騒から離れ、静かな海辺の町にやってきた。何の計画も立てずに、ふらっと旅に出ていた。
何に疲弊するほど持っていかれているのかは、自分自身でもわからずにいるから、旅に出たところで回復できるとは思ってはいない。
けれど、とにかく現実から逃れたかった。ただ、それだけ。
「この企画で通ると本気で思ってる?」
キャリア的には私の方が長いけれど、実績が乏しい分年下の上司には言い返すことができない。
「根古さん、ずっとファッション誌業界にいるんでしょ? この夏の新色も探せなくてどうするの」
「そうですよね」
やっとこさの返答。
悔しかった。けれど、力量がないことは己が一番わかっている。
海が見たくなった。空も見たくなった。
さざ波の音が聴きたくなった。海鳥が鳴く声が聴きたくなった。
海は毎日違う色を見せてくれた。空も毎日違う色をしていた。
この瞬間、瞬間を切り取って編集長に送りつける準備をする。
「で、何という名前の色なの?」
と、問い詰められるのが関の山だと思い直した。
夏がくる。
私の仕事も限界がくるのかな。
それでも、今日も夜が明ける。
『新色、夜明けの吐息色』
夜明け、Dawn。夜明けに関する色は多数ある。
それほど、夜明けは期待と不安を抱えた空間なんだ。
だから、色もたくさんある。
期待と不安が入り混じった色として。
見る人が、感じたままに、各々の色を表現していけばいい。
私は、そう主張した。
採用されたか?
それは、この夏にわかる。
夜明けの海と空の色が好きです。
三羽 烏さま
新色、参加させていただきました。
よろしくお願いいたします。
サポートしてほしいニャ! 無職で色無し状態だニャ~ン😭