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ぼくはくま、きみは猫 #青ブラ文学部
ぼくはくま。
くまといっても、みんなから恐れられている野生の熊ではないんだ。
みんなから愛されているテディベアのフォックスっていうんだ。
くまなのにフォックス(キツネ)って変なのって、思うかもしれないね。
ぼくの毛色がキツネ色だったから、ご主人様が名付けたんだ。
あ、ぼくの本当のご主人様は生後六ヶ月のエイミーっていう女の子。生後六ヶ月といっても人間の赤ちゃんじゃなくて、アメリカンショートヘアっていう種類のかわいい仔猫ちゃんなんだ。
仔猫ちゃんといっても、くまのぼくよりもハグする力は強し、牙だって爪だって、ぼくよりもずっとずっと鋭いんだよ。
でも四六時中、エイミーはぼくと遊んでくれるし、ハグやキスもしてくれるんだ。時折おもいきり噛みつくけれどね。
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ある日エイミーの飼い主さんが、もっと大きくて強そうなサメのぬいぐるみをぼくと交換しようとしたんだ。
でも、エイミーはぼくをグッと噛んで、離そうとしなかったんだよ。
「エイミー。フォックスは、壊れてしまったから、しばらくこのジョーくんと仲良くしていてくれる?」
『なにがジョーだ。ぼくはくまだぞ。おまえなんかより、ずっと強いんだからな』
と、ぼくは心の中で叫んだ。
もちろん、エイミーも飼い主さんに抵抗してくれたよ。
「違うのよ、エイミー。フォックスをおもちゃのお医者さんへ連れていくのよ。ボロボロになってしまった手足を治して、またエイミーのところへ戻ってくるのよ」
飼い主さんはニッコリ微笑みながらエイミーの口元へおやつを差し出す。
ポロっと、ぼくはエイミーの口から離れた。
ああ、これでぼくの人生(人じゃないのだから、おかしいね)
エイミーのおもちゃとしての役目も終わったなと感じた。
![](https://assets.st-note.com/img/1738570211-yeWGa8Tzt7EOciZLQm49KFjU.jpg?width=1200)
数日後、ぼくは目をさますと見慣れた光景があった。
ベロンとざらついた舌でぼくの鼻をなめるエイミー。
ぼくはくま。
くまのぬいぐるみ、フォックス。
きみは猫。
また噛みつかれブンブン振り回されている。
「エイミー。ぼくはくま。くまだけれど、猫のきみより弱いんだよ」
でも、愛されていることが、何よりもうれしいんだ。
了
#青ブラ文学部 #ぼくはくま
山根あきらさん、企画に参加させていただきます。
よろしくお願いいたします。
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