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都の春はもう爛漫で

都の春はもう爛漫で、大路のあちらこちらに薄桃の花が咲き乱れている。上から見れば雪か霞か見紛うばかりのはかなき美しさ、急な春風に渦を巻いて舞い上がる花びらまでもが面白い。

今日ばかりは家々に貧富の別はなく、皆揃って迎春の面を飾る。椀状の木に口と目の穴を開け、千切った紙を溶いた水糊で塗り固めた面だ。福々しい面持ちの少女の面はみな大路に向いて微笑み、春の女神を歓迎する。

女神は風に乗って都を駆ける。北の山から南の城門に向かって一気に駆ける。女神にしてみれば、東の端と西の端を同時に見守ることなど訳もない。家々に飾られた面だってよく見える。

女神をのせた風は力強く吹く。薄桃の花々はいっとう高く舞い上がり、寺院の幡はねじれて回る。川には波頭が、横断のしるしとしてさざめいている。

どこかで子供の歓声が聞こえる。大宮人の詩吟が後を引く。その全てが薄い桃色に染められていく。



という夢を見たので書きました

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