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母、見知らぬお婆さんをトス上げする

母は「なぜそんな目にあうの」とよく言われる人だ。

一番シャレにならなかったのは、輸血を間違えられた事だろう。私が赤ちゃんだった頃、母は手術をし、輸血となった。母の血液型はA型なのだが、術後目覚めると、輸血の袋にB型と書かれていたらしい。
「血液型が違う!」
と父に言ったが、そこに医師もいて、
「ちゃんと調べましたよ。手術の後で頭が混乱しているのでしょう」
と否定されたらしい。なんて恐ろしい。でも母はそんな訳はない、調べ直してください! と猛抗議して調べ直したら、やはりA型だった、とのことで医師看護師全員から土下座されたらしい。
「訴えなかったの?」
と聞くと、友達の旦那さんが担当医だったから出来なかったのよー、と苦笑いしてた。苦笑いて! 生きててよかった。

と、まあこれは最悪の「なんでそんな目に?」例なのだが、普段は深刻さゼロの変な目によく遭って、私たちを驚かせてくれる。

先日、母は駅のホームに向かうためにエスカレーターに乗っていた。すると3段前に乗っていたお婆さんが、キャリーバッグを落としそうになり、押さえているうちにバランスを崩し、後ろ向きに母の方に落ちて来たという。

母は、はっ、とそのお婆さんの背中を両手で押し留めた。そして、
「このままお婆さんを元の段のところに戻してあげよう」
と親切に(本人談)思い、少々力を入れてぐいっとお婆さんを押し戻した。
「そしたらそのお婆さんもキャリーバッグも驚くほど軽くて、私お婆さんをぽーん、てトス上げしちゃって、慌ててステップを駆け上って、お婆さんを引き戻したのよ」
輸血間違った経験のある80歳近い人間の身体能力の高さよ。

お婆さんは無事上まで到着できて、抱き付かんばかりに感激して母に繰り返し、
「ありがとう、ありがとう」
と感謝を述べたという。

あー、母から聞いた時はめっちゃ面白かったんですが、書いたらそうでもなかった。修行が足りなかった。
もっと頑張ります!

あと、キャリーバッグの時はエレベーターに乗りましょう。


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