
ボーナスよりも、お金で買えない幸せを選んだっていいじゃんか
年の瀬が迫ると、毎年のようにテレビで、こんな特集を見かける。
「あなたは年末のボーナスで何を買いたい(やりたい)ですか?」
みたいなものだ。
日に日に寒くなるこの時期は、クリスマス、お正月。特別なイベントが立て続けにやってくる。街中にもイルミネーションが灯り、何かと活気が溢れてくる。
そんな時は一年に一度の長い休みを取って、大切な人と集まり、楽しい思い出を作る人も多いはずだ。
そりゃ1年を締めくくるご褒美に、ボーナスがあったら嬉しいだろうな、とは思う。
特別感のある、普段は貰えないお金なんだから、貰えたら余計に嬉しいだろうなって、
思ってはいるけどさ。
私の場合、今年の締めくくりに、ボーナスはない。
新卒で入社した会社を今年の8月で辞めるタイミングで、ありがたいことにボーナスは出していただいた。
それに関しては、とてもとても感謝している。
でも、今働いている図書館では、私はあくまで契約社員であるので、貰えるのは働いた分のお金だけだ。当たり前だけど。
それでもさ。
ボーナスが貰えないのって、何が問題なん??
何も問題ないじゃないか。お金を使いすぎなければ。
特別なイベントが多いこの時期は、誰もが(普段よりも)お金を使いまくるってことが世の中では前提になってるから、まあボーナスの良さが取り上げられるのも仕方ないなって思う。
うん。それは確かにそうだ。私もお金はないより、ある方が良いと思っている。単純に、自分が買いたいものや、やりたいことの選択肢が広がるから。
契約社員じゃなくて、正社員の方が待遇が良いってことも分かってる。その方が将来的には安定する。老後の不安も薄れる。
そりゃそうだ。分かってるよ。去年はそのために就活頑張っていたんだし、そんなこと、とっくのとうに分かり切ってるよ。
ただ、私は今の生活が、とてもとても充実していて幸せだなあと感じている。間違いない。何より、蕁麻疹が出ていないし。
職場の皆さんも本当に素敵な方々が多く、温かい言葉をお互いに掛け合いながら、大変な時もあるけれど楽しく働けている。
そんな環境に居られること自体、正社員で居るよりも、ボーナスが貰えるよりも、私にとっては、泣きたくなるくらい幸せなんだよ。
私はこの半年くらい、心が壊れて何もかもチグハグな状態になってから、自分だけの幸せの形を必死で探し始めた。
ノイズだらけの社会で、そこに埋もれてしまった私の本音に、耳を澄ませた。
正直今も、私だけの幸せの形なんて、ぼんやりとしか見えてない。
テレビを見ても、SNSを開いても、家族に意見を求めても、みんな最もらしいことを言ってるけれど、
私という形にぴったりと当てはまる幸せなんて、どこにも転がってない。周りの言葉を鵜呑みにするだけじゃなくて、自分だけの感覚を研ぎ澄ませて、私自身が納得できる形にしていくしかないんだと思う。
苦い思いをする覚悟で、傷ついて。その先に本当に幸せって、見えてくるのかな。
それでも。辛い思いをするのなんてもう、こりごりだけどさ。
自分にしかない、お金では買えない幸せを、もっと大事にしたいな。
職場からの帰り道。ふと、空を見上げる。
イルミネーションだけじゃなくて、星も瞬く季節になったんだなあ。
退職してから、あっという間に時が流れ、冬がやって来た。
ひたすらに感情が揺れ動いた半年間。だけど、その流れに身を任せていたら、自分という形すらも見えなくなってしまった。
今もあの時の苦しみを思い出すだけで、胸が締め付けられそうになる。またチグハグな自分になったらどうしようって、不安に思うこともある。
忘れるわけない。辛いよ。
今までの「良くない」ことはまだ全部、「これで良かった」だなんて、とても言い切れないけどさ。
揺れ動く感情すらも、全部受け入れて、そっと抱きしめたい。例えまた傷ついても、自分の幸せを探すことだけは諦めたくはないな。
凍える寒さの中、一瞬だけ湧き上がる苦い気持ちを何とか飲み込んで、私は歩き出す。
寒空に瞬くわずかな灯りが、少しだけ私の足元を照らしてくれたような気がした。