りんごの皮をむいてくれる人が居たらほんとに大事にした方がいい。
心配事の9割は起こらないっていうけどさ。いや1割は起こるんですよね??
どうしてもその1割が気になっちゃうんだよ。
昨日の夜はずっと、落ち着かない状態だった。朝から仕事に出かけて、いつも通り夜の7時くらいに帰ってくるはずの母と、連絡が取れない状態が続いた。
LINEでメッセージを何度も送ってみる。
ダメ。
3回くらい通話しようとしてみる。
でも、ダメ。
こんなことは今までなかった。夜帰るのが遅くなる時は、事前に伝えるか当日の夕方には連絡が来る。急遽飲み会が入る時も、必ず連絡してくれるはずなんだけど。
そうなんだけど。そうじゃないとしたら???
怖かった。ただただ怖かった。
色々想像してしまう。嫌なこと、とにかく嫌なこと、あれこれ。
こういう時に、何気ない日常では思いもしないことを思ってしまった。
母が居てくれるって偉大なんだな。
母は、いつも家族のことを考えてくれている。私が小さい頃からそうだった。私と、私の家族の為に、小さな幸せすらも大事にする人だ。
雨が降った日は、私を車に乗せて駅まで送迎してくれる。
「自分がされたら嬉しいでしょ?」といつも言っている。
毎朝早起きして、めんどくさいはずなのに、私より早く家を出るのに、柿やりんごなどのフルーツの皮をむいてくれる。
「お弁当にフルーツがあると嬉しいでしょ?」といつも言っている。
体が超固くて肩こりがひどい私のために、マッサージやストレッチのやり方を事細かに伝授してくれた。母自身も体型維持のためにやってることなのだが、「あんたはこうした方がいい」って、私の体を労わりながら優しく教えてくれた。
まだまだある。沢山ある。母に感謝したいこと、感謝しなきゃいけないこと。
そんな母が、居なくなってしまったらーーーー
え?
足元を覆っていた何かが揺らぐ感覚に初めて、襲われた。
お風呂に入る時も、歯を磨く時も、気を紛らわそうとYouTubeを見ていた時も。
何をしようにも気持ちが浮ついて、まるで私という人間すらもそこに居ないかのようだった。全ての景色に灰色のモヤがかかった。
だからもう、ひたすら祈るしかなかったのだ。「早く帰ってきて」と。そうすることしか出来ない自分がもどかしかった。
そんなこんなで、待つことかれこれ3時間。
夜11:15ごろ、ついにLINEが動いた。
「え、今日ご飯いらないって言ったよね?」
全身の力が抜けた。
安堵の気持ちと同時に、ドラえもんのアニメで流れるような、すんごく間抜けなBGMが流れていた。
同僚と飲んでいたらしく、私の電話にも全く気がついていなかったらしい。
全く、、、笑い話に出来るくらいなら、それならその方が幾分もマシだよ。
手遅れになるよりは。
でも、いつの間にか当たり前だと思ってしまっていたな。側に居てくれる人。私の体や心の状態に気を配ってくれる、大事な人がいる。それって、当たり前じゃない。本当に。
大事なことを失ってから気づくような人に、私はなりたくないな。
帰宅した後に冷蔵庫を見たら、朝のりんごの残りが取ってあった。今日は私だけが仕事で朝早かったので、りんごを食べる暇がなかったのだけれど、丁重にラップに包んで取っておいてくれた。
これも全部、母の気配りだ。
些細なことかもしれない。けれど、この幸せは一生大事にしたい。
今度は私が、りんごの皮をむこう。