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優しくて残酷なひと
失恋しました。
3か月の音信不通を経て、「もう好きじゃなくなった、普通に戻った」と。大学2年間の恋の終わりです。
初めて付き合った人、初めて自分から告白した人、初めて結婚したいと思った人でした。
◇出会い
コロナ禍1年生として大学に入学した2021年の12月、彼はサークルの3つ年上の先輩でした。3月に行う舞台に向けての稽古で、初めて彼に挨拶しました。
「初めまして、'とまと'です」
「初めまして、○○です。よろしくね」
「ちゃんとした名前は何ですか?」
「みんな○○って呼ぶから、知る必要ないよ~」
第一印象は、不思議な人。
話しにくいでもないけど、掴みどころもなくて、どんな人なのか全くもって謎でした。
それが、だんだん彼と過ごすうちに、話しやすくて楽しい先輩に変わっていきました。
よく話しかけてくれたり、分からないことを丁寧に教えてくれたり、温かな好きが徐々に降り積もっていくのを感じてました。
それが恋心に変わったのは、舞台の小屋入り中、
真っ暗な狭い空間で出番を一緒に待っていて、突然頭をポンポンされたのです。
「背低いね」って彼は何気なく、私の頭に手を置きました。
それが全然嫌じゃなかった!!
今まで蛙化現象で男性から触れられたり、褒められたり、それだけで気持ち悪いってなる私がいたけれど、彼は違いました。
それがきっかけで一気に好きが溢れました。
◇告白
舞台が終演したことにかこつけてお礼LINE、最後にご飯行きましょってつけて送りました。
横浜にオムライスを食べに行って、好きな食べ物・嫌いな食べ物の話、今までしてたアルバイトの話、他にもいろんな話、あとは食レポしてふざけてみたり、とにかく楽しかったです。
食べ終わってからエレベーターで1階まで下がるとき、床に足跡シールが貼られてて、「コロナだから外向きになってるね」って2人で笑ってました。
そしてエレベーターのドアが開き降りてみると、1つ下の階でした。2人でフフッと笑い合いました。
波長が合って、のんびりな気持ちで過ごせて、もっと好きになりました。
**
1度目の食事後、サークルでは前よりも2人きりになる機会が増えました。なので相手から誘われ待ちしたのですが、1ヶ月進展なくまたご飯へ誘いました。
「前にご馳走してくれるって言ってたの、誘ってください!」
とお願いして、お店も彼に選んでもらって、ハンバーグを食べに四谷まで。
彼は理系で、卒業後は大学院に進学しているのですが、彼の研究の話をしてもらえたのが嬉しかったです。
けれど同時に、サークルにはもう来てくれなそうだと寂しくなりました。
帰り際、駅の改札で告白しました。
呼び止めたけど、なかなか言葉を言わない私の目をじっと彼に覗かれて、
「お気づきかもしれないですが、好きなので付き合ってください」
と言いました。
「うーん、そんな気はしてた。だけど’とまと’ちゃんのこと好きかどうか分からない」
予想外の返事にじっと黙っていると、
「かわいいとは思ってるから、恋愛っぽいことはできないかもだけど、付き合ってみる?」
交際0日目、彼氏が初めてできたのに、全然嬉しくなくて
「胸が苦しい」という言葉の意味を初めて理解しました。
◇彼の気持ち
彼はサークルにぱったり来なくなり、LINEの返信も遅くなりました。
告白してから数日後、初めて彼と電話しました。
「もしもし」
「もしもし、夜遅くにありがとうございます。」
15分ほどの電話で彼の気持ちを聞きました。
「'とまと'ちゃんのことはかわいい後輩だと思ってる。負担もないし、付き合うのは全然へいき」
.
「あんまり嫌いな人がいないのね、だから’とまと’ちゃんへのことも、他の人より抜きんでて好きではない」
.
「電話好きじゃないのは親に聞かれたくないからで、このくらいの時間なら電話してもいいよ」
私にだけだと感じていた彼の優しさは、
彼にとっては特別なものでもなんでもなく
ただ当時の私は
彼が鈍感でまだ私への好きを自覚していないだけだと
特別ではない優しさの中に自覚のない特別があるだろうと
だから、彼が好きと言ってくれることを信じて頑張ろうと思いました。
**
付き合って3か月、3回目の1日デートで江ノ島に行ったとき、初めてのキスをしました。
星を見ようと奥の岩場で日が沈むのを待って、
一番星みっけ!
2番目!3番目!4番目!...
あっという間に時間は過ぎて、そろそろ帰ろうかと彼が手を引きました。
階段を上ったとき、空に浮かぶ月の光が海に反射してとても綺麗でした。
そのまま雰囲気でハグをして、キスをしました。
そのとき彼に、「私のこと好きになった?」と聞くと
「うん、好きだよ」
彼は常に安定的な人で、一緒にいると心の中の不安だとか焦りが消えて、彼の隣は私の居場所なんだって安心できる場所でした。
彼の全てが愛しかったです。
◇音信不通
付き合って2度目の1月、彼から「研究が厳しくて、しばらく会えそうにない。ごめんね。」と連絡が来ました。
私:学部3年 彼:修士2年
彼は修士論文を書いていました。
そのとき私も上手くいかないサークルと就活で滅入っており、彼とハグしたくてたまらなくて、無理を言って30分だけ会いに行きました。
ギュッと力強くハグされて
「我慢させてごめんね、終わったらたくさん会おうね」
これが、私を大好きな彼と会った最後でした。
それからLINEの既読がつかなくなりました。電話をかけてもスマホの電源が切れているし、パソコンのメールにも返信はありません。
修士論文が終わると聞いていた日を過ぎても連絡は来ず、彼の家に電話をかけました。
その後彼からメールが来て、修士論文が再提出になり追い込まれていること、数週間前からスマホの電源を切っていることを知りました。
彼からの申し訳なさが詰まったメールに私は返信をしませんでした。
1ヶ月の音信不通、焦る就活、上手くいかないサークル活動、返信する気力がありませんでした。
**
彼と次に会ったのは4月第1週目、私は学部4年、彼は博士1年目となりました。
「もう好きじゃなくなった、普通に戻った」
緊張した様子の彼から言われました。
修士の2年間私と過ごす時間が楽しくて、研究が上手くいかなくても、まあいいかと思ってしまっていたこと。博士の3年間は研究に集中したいこと。
それから私と会わないうちに、気持ちがなくなったこと。
彼が丁寧に気持ちを伝えてくれて、私の話もじっくり聞いてくれて、だから話しているうちにいつもの恋人の私たちの雰囲気に戻っていました。
また、音信不通からいきなりのお別れ宣告だったため、2か月後彼に連絡してもらい会うという約束をしてバイバイしました。
◇失恋後
フラれてから2週間くらい、不思議と元気でした。
フラれた事実を現実として受け止めていなかったのかもしれません。
なぜ彼が冷めてしまったのか私の良くなかったところを分析したりして、復縁できそうとか考えてました。
それから情緒不安定→未練薄まる→情緒不安定→やっぱり好きかも
を繰り返していきます。
6月1日、彼から約束の連絡がありました。
正直連絡がこないと思っていただけに、とても嬉しかったです。また、彼が私を覚えていたことにほっとしました。
◇本当の恋の終わり
2か月ぶりに会った彼は、いつもと同じ彼でした。
「依存してた気持ちが消えて、ただ大切だと思う気持ちが残ったよ」
素直に言いました。
「あまり思い出すこともなかったな~」
と彼は悪気なく返します。
「連絡してくれたのはどうして?」
「約束したから守っただけだよ」
私が彼に対する想いを巡らせている2か月間、彼は私のことを思い出しさえしなかった。
連絡をしたのも、した約束を守るためであって、私に期待させるかもとか一切考えてはいない。
<愛の反対は、無関心>
という言葉が頭に響きました。
彼は私を求めません。突き放しもしません。
優しさだと思ったそれは、私に対する「どうでもいい」でした。
<優しくて残酷なひと>
私にとって彼はそんな人になりました。
同時に私への愛情を持って接してくれた彼とは、もう会えないのだと気づきました。
フラれた時点で、私の大好きだった彼はもう、存在していなかったのです。