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漫画
負けたくない。ここで負ければ囲碁棋士を引退しなければならない。
いったいどうしてあんな所に置いてしまったんだ!
あんな所においててしまうと盤の三分の一は、相手にあげてしまったようなもんじゃねえか!
自分に対して怒りが増してきてしまう。思考が鈍る。 この対局で負ければもうプロの棋士になれない。 プロの囲碁棋士になると決めた時、親父に「俺は、プロの囲碁棋士になる」と伝えた日、初めて親父と大喧嘩した。 親父の中では、ずっと勉強ばかりしてる俺を見ていてきっと会社の後を継いでくれると思ってたらしい。 それどころか自慢では無いが、まぁ自慢に聞こえてもしょうがないが学校の成績はいつもトップで今は、日本一の大学帝都大の学生だ。 だから、そんな俺をずっと見てきたから親父は今の今まで何も俺にやりたい事に口をはさんだり強制的に何かをやらすといった事はしなかったんだろう。 そんな親父の気持ちも知らずにいた、俺は知らずしてプロの囲碁棋士なるなんて言い出す事に親父は驚愕と祖父の時代から受け継いできた会社を親父の時代で終わる事は、親父にとって許されないことだったんだろう。 大学に入った時から俺は一人暮らしをし始めていた。 親父の顔とあうと必ず「プロの囲碁棋士なんてどうするんだ⁉負ければ金にならんのだぞ!わかっているのか!黙って勉強して経済を学び会社を継いだ方がよっぽどマシな人生を送れるというのに!馬鹿な奴だ、、、」と言われ俺は、逆上して「二年の赤字が続いている会社なんか継いでどうするんだよ!会社が潰れるのも時間の問題だろうが!」と怒鳴りつけてやった。 それから大学に入学してその年の秋ごろに囲碁会館にいって外来受験者として棋譜審査に合格した。 棋譜審査に合格した事も伝えるため正月に自宅に帰りおふくろに報告した。 親父は、ずっと知らん顔だった。 おふくろは、親父の前では何も言わなかったが通話アプリや親父のいないところで喜んでくれて”おめでとう”といってくれた。 その年の夏季の合同予選に落ちてしまった。 次に行われるの冬季の合同予選、俺はなんとか無事に合同予選を突破することができた。 俺は嬉しくておふくろに電話して伝えた。 おふくろは、大いに喜んでくれた。 すると急に電話の向こうでガサガサと物音が聞こえると嫌味な声が聞こえてきた「お前、母さんから聞いたぞ!次の本選で勝って上位2名に入ることができれば、念願のプロなんだよな。負ければプロの囲碁棋士も大学も辞めて会社に入ってもらう。いいな!大学費もお前の生活費も出してやってるのもそろそろ限界なんでな。わかったな」と言ってきたのだ。 俺は、「わかった、約束する」といった。 もちろん受かるつもりでは、あるが大学に入り一人暮らしをし始めてからもう一年となる。 俺は、親父に甘えている事も我儘をとおしてもらっている事も理解しているし感謝もしている。 あの親父の言いなりは気にいらないが、筋を通さねばらない。 今の俺は、以前の時とは違う。 今回の本選で必ず二名に入ってプロになってやるんだ。 だが神様の悪戯なのか、今回の本選人数は6人でそのうち4人はトーナメント戦のように勝ち上りとなっているが残りの二人そう俺と今、目の前にいる対戦相手は、この戦いで負ければそこまでなのだ。 それなのに俺は飛んだ悪手を打ってしまった。 何をやってるんだ!俺は! 盤面をよく見ろ!今のは、右下を攻めて陣地を確定させつづ左下を盤面をじっくりと攻めれば良かったんだ。 なんで左上、しかもコスミに打っちまったんだよ!クソが! 盤面が進むにつれていくうちに自分の陣地が崩れていくのが五感で伝わってくる。 負けた。 これは、どうあがいても負ける。 ふと、あきらめて投了しようと頭を下げた時、昔親父に聞かされた話を思い出いした。 「父さんは、初めておじいちゃんから会社を受け継いだ時にな会社を倒産しかけた事があったんだ。その時、じいちゃんに怒られるて社員からも誰からも信用されなくてね。そんな時、母さんが俺が大好きだった漫画を読んでたんだよ。久々に少しだけ読んでみようと漫画を開いたらそこには、、、、」 俺は、はっとつい大きな声で言ってしまいそうになった。 そうだ!あの時、親父に俺は笑いながら子供みたいて言った。 俺は、食い込むように盤面を隅から隅まで見てみた。 隣で秒数を数える声が聞こえなくなるくらい盤面をみた。 そして俺は、碁を打った。 対局が終わり休憩室でおふくろに電話した。 「勝ったよ」と伝えた。 おふくろは泣きながら喜んでくれた。 親父に電話変わってくれと頼み、おふくろは親父と電話を替わった。 親父は、相変わらず嫌味な感じで言ってきた「勝ったのか?」俺は、「ああ、勝ったよ。親父が好きだった漫画ってまだ持ってる?」と聞くと「あの漫画かもってるよ」と答えた。 「今度、そっちに戻るから読ましてくれよ」というと親父はなんだから照れくさそうに「わかった。きっとお前もハマるぞ!」と言って後日、俺と親父は、好きな漫画で楽しく話した。