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geochan
アスペルガーの娘に生まれて20
こうして晴れて大学に落ちた私は、ホテルでアルバイトをはじめた。宴会科というところで、主に結婚式の飲みものや、料理を運ぶのが仕事だった。
それぞれ円卓を一つずつ担当させられる。
ある時自衛隊の退官記念パーティーの会場として使われたことがあった。飲み放題をいいことに飲 飲むわ飲むわは、業務用冷蔵庫のビールが空になって、しまいには常温のビールを出さなければならない程、飲み尽くされた。
その時私が担当した円卓に1人好感触の人がいた。私は勇気を振り絞って、キッチンの陰で名前と電話番号とともに、(私と友だちになってください)と書いた紙を彼の帰り際に渡した。
次の日に電話がかかってきて、ふたりでドライブに行くことになった。車の中で自衛隊の仕事、福利厚生が充実している事、基本8:30〜17:00までで終わることなどを聞いた。生まれてはじめて知る世界で、ちょっと興味をそそられた。
彼に会ったのはそれが最初で最後になったが(ドライブに行って、食事をしただけ)、これがきっかけで、私はそれから程なく駐屯地に
自衛官になりたいんですけど…
という電話をかけたのだった。