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アスペルガーの娘に生まれて21

自衛隊での生活は思っていたのと違い楽しかった。

独身の隊員は、駐屯地内の宿舎で暮らすことになる。それが修学旅行の延長みたいで楽しかった。

もちろん上下関係は厳しいし、肉体訓練もある。だが、ずっと水泳を続けてきた私にはハードな訓練も楽しくて仕方なかったのだ。

そんな自衛隊生活だったが、ひとつだけ困ったことがあった。
任期制のアルバイト隊員でなく、終身雇用で入った私は、上官に期待された。とても窮屈だったし、正直戸惑った。軽い気持ちで入った自衛隊で、重い荷物を背負った気分だった。

そんな自衛隊生活になぜ終止符を打ったのかというと、私には東京の駐屯地で働いている彼氏がいて、結婚を意識する年でもあった。だから、同じ駐屯地じゃなくても、せめて関東の駐屯地に転勤させてもらえないかと上官に伝えたが、それはシステム上不可能だ、と言われた。
実際自衛隊で働いているママさん自衛官は、結婚生活の大部分を別居で過ごすという現実もあった。
彼を取るか仕事を取るかで悩んで、結局仕事はやめた。
大好きな仕事だっただけに、辞めた後の空虚感は大きかった。
何を食べても砂を噛んでいるような味がする。ぽっかりと胸の辺りに穴が空いて、そこを風がびゅうびゅうとふいているように感じた。

私は病院で、鬱病と診断された。



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