【感想】封印された『電車男』
おもしろかった
80円の古本を1000円で買わされぼったくられた!とも思ったのだが1000円出すだけの価値はあった
電車男が実際はどういう物語だったのかを2ちゃんの書き込みから探ろうという本なのだが、2ちゃんの書き込みを並べてその合間に作者が解説を挟むという形なのでページ数の割には読みやすかった
インターネットを題材にした本はよくあるが、インターネットそのものを検証しようという試みは珍しいと思う
書籍内では電車男が自分に都合のいい指摘やアドバイスだけを拾って理想のストーリーを作り上げていたのではないか、映画やドラマとしてまとめられた電車男からは2ちゃん特有のドロドロとしたコミュニケーションは排除されている、などの指摘がされている
当時の2ちゃんの住民からは電車男は評判が悪く、確定的な証拠はないもののヤラセ疑惑も根強くあった 実際単行本の印税だけで1億5000万円あり、莫大な利益を産んでいる
筆者は後書きで「投稿の9割が削られ、口当たりのいいエンタメに改変された結果、インターネットのコミュニケーションが捻じ曲げられ、掲示板の住民の声は存在しなかったことにされている これで本当にいいのだろうか?」としている
この筆者の言葉は自分が普段思っていることと近いし今のインターネットにも当てはまると思う
この20年、インターネットは何も変わらなかったのだろうか
表に出てくるか出てこないかに関わらず、無数の電車男的な現象が寄り集まってインターネットを形作ってきたんだと思う
俺達の居場所としてのインターネットを信じられる日がいつかくればいいなと思う