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DXにおける大きな勘違い(その4)

総論(鳥の眼)と各論(虫の眼)

前回は、DXの活動におけるAI開発について、その失敗パターンの一つを考えてみました。さて、今回は前回の失敗パターンを掘り下げて、何故「取り敢えず開発」とか「なんちゃって開発」が生じてしまうのかを考えます。

キーテーマは「総論(鳥の眼)と各論(虫の眼)」です。次の図をご覧ください。ここでは、各事業部門を虫の眼レベルとしましたが、他に「本店と支店」や「日本の本社と海外支社」など、いろいろ設定を変えられます。

鳥の眼・虫の眼

DXを考える上で重要なポイントの一つが、「全体最適」と「優先順位」です。世の中にはDXに関する「成功例」がたくさん流れていますが、それぞれの成功例は、その企業の環境における「特定の個別業務」におけるものだと言えます。その為、世間の成功例を自社に当てはめようとしても、環境が異なるのでそのままコピーすることは出来ません。

ポイントは「目の付け所」です。事例を見てみましょう。
①アマゾン ジェフ・ベソス氏
資産運用会社に勤務していたジェフ・ベソス氏は、たまたま調査した「インターネット」の驚くべき成長率に気づき、Amazonの前身となるcatabra.comを自宅のガレージで立ち上げました。
②コマツ 四家 千佳史氏
福島に設立した建設機械レンタル会社で、当時の業界では「建機のレンタル注文がくる。支店に無い時は断る。他の支店、本店も調べ、会社全体で建機があれば回す。そんな当たり前のことさえしなかった。」中で、ITを駆使したレンタル資産管理により高品質・高稼働率を実現して高いシェアを獲得。後に、コマツの執行役員になりコマツのDXを主導。
③モノタロウ
2000年に当時住友商事に在籍していた瀬戸欣哉氏が、事業者向け工業用間接資材の通信販売会社として設立。インターネットを活用し、業界の古い体質にメスを入れ成功。

以下は、四家 千佳史氏の講演記録からの抜粋です。
各建機レンタル会社には無駄の山があった。それをなくせば宝の山に一変する。支店(営業所)に建機のレンタル注文がくる。支店に無い時は断る。他の支店、本店も調べ、会社全体で建機があれば回す。そんな当たり前のことさえしなかった。建機は購入価格が高い。稼働率を高めるか否かが会社の生死を分ける。「建機レンタル業界に経営がなかった。経営を導入すれば、断トツ、トップになれる」支店ごとの効率を考える「部分最適」から会社全体の「全体最適へ」。実現するにはITしかなかった。

兎角、「デジタル・IT技術」に目が向きがちなDXですが、四家氏が、目を付けたのは、以下の4つです。
①無駄の山
②当たり前のこと
③部分最適と全体最適
④IT
他の2つの事例が示しているのは、「⑤インターネット」です。

(ChatGPTに以下の質問をしました。回答の頭出しをしておきますので、皆さんも調べてみてください。)

質問)アマゾンが登場する以前のアメリカの書籍市場の在り方を教えて
伝統的な出版社
実店舗での販売
書籍の取り寄せ

質問)モノタロウが登場する前の事業者向け工業用間接資材市場の状況を教えて
複数のサプライヤーとの直接取引
分散した調達プロセス
情報の不透明性

如何でしょうか?
各社の「目の付け所」は、古い業界体質の中の「非効率性」、つまり・・・無駄、や当たり前のことをやっていない、部分最適と全体最適などのポイントだったのです。業界や市場の非効率性を打破出来れば「リーダー」なれます。しかし、そう簡単ではありませんね。非効率性とは、「社外」ばかりでなく「社内」にもたくさん転がっていそうです。次に社内の非効率性を改善したDXの成功事例をご紹介します。

愛知県にある旭鉄工株式会社です。
IoTを用いた生産性改善活動により、自動車部品メーカーの旭鉄工は、100の製造ラインの生産能力を平均43%向上し、年間4億円の労務費を節減しました。

旭鉄工さまのDX活動は、「Small Factory 4.0 第四次「町工場」革命を目指せ! IoTの活用により、たった3年で「未来のファクトリー」となった町工場の構想と実践のすべて」三恵社 (2019/11/15)に詳しく書かれていますが、この成功の発端は、小さな「カイゼン活動」からでした。
「2013(平成25)年末頃のことです。当社の改善指導にお越しいただいていたトヨタ自動車の主幹から「生産管理板を書いてPDCAサイクルを同すように」という指示をいただきました。」(上記書籍から抜粋)と始まっているのですが、「生産管理板」を人手で書こうとすると、手間や時間などの負担が発生することから、人手によるのは非現実的だと判断し、解決手段としてIoTによる生産管理板のデータ自動測定を採用したのです。その結果として大きな「無駄」の発見に繋がりました。小さな活動が大きな成果に繋がったのです。

DX活動では、何かシンボリックな「大成功」を求めてしまうかも知れませんが、「無駄なこと」や「当たり前を当たり前に出来ていないこと」の発見が第1歩です。成功事例では、「ネタが見つかっている状態」から解説されるので、時には「簡単」に思えてしまうかも知れませんが、実際には、これらを探し当てるのはそう簡単ではありません。しかし、ちょっとした「手掛かり」を深掘りすることで、大鉱脈を発見することに繋がる可能性があります。皆さん、あきらめず、倦まずプラス「継続は力なり」で頑張りましょう。

DXで困っている方、悩んでいる方。個別のご相談に乗ります。ご一報ください。(まだ、HPが整理出来ていませんが、フォームからご連絡ください。)




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