撮影技術、デジタルシネマカメラ (PRO仕様)でのムービー撮影
この章で扱うデジタルシネマカメラとは、ARRI ALEXA,SONY VENICE,RED等 ,映画、CM、MVなどで使用される
PLマウント、LPLマウントのシネレンズを使用するクラスの機材の話が基準です。
多くの場合は制作会社、技術会社が専門のレンタル機材会社と契約し、
撮影部が前日に機材の動作チェック後に借り、撮影後に返却する方法となります。
sonyFXシリーズ等で、写真用レンズや、マウント変換してシネマレンズを使用するスタイルでも、技術の基本は同じですが、一定以上のクオリティに費用と機材量と人数をもって撮影されるケースの事案の紹介となっています。
絞り(アイリス)は明るさを調節する為に使うものでは無い!!!
絞りは「被写界深度」をコントロールする為に使います。
シーンごと、作品ごとに「被写界深度」をどのくらい浅くするのか、
または深くするのかをあらかじめ決めます。
シャッタースピードはほぼ固定。
24fpsベースで1/48sec、または 1/50sec、30fpsベースで1/60sec、早くても1/100くらいが順当。
多くの場合、作品を通して統一して決めます。
通常は「動きの自然な滑らかさを」優先してこのあたりの数値になります。
1/200secを超えるとパラパラ感が出てきて一般的な演技等には好まれません。もちろん、早いアクションシーンや、独特な狙いによっては自由に設定します。ハイスピード(スローモーション)、スローシャッター時は例外です。また、フリッカーの出る光源への対策として調節する場合は個別に微調節をして対応します。
ISO感度とNDフィルターの調節で適正な露光量を決める。
アイリスで「被写界深度」を固定し、
シャッタースピードで「動きの滑らかさ」を固定し、
ISO感度とNDフィルターの調節で「露光量」を調節します。
晴れても曇っても、絞りとシャッタースピードは同じ!!
例えば、屋外で、シーンを通して、被写界深度はF2.8、 シャッタースピードは1/100 、と決めます。
ISOを50に下げても、晴れた日の直射日光下だとシャッタースピードは1/100でF16に絞れてしまうだけの光量が有ります。
この場合は、
ND1.2のフィルターを絞り4stop分(F16→8→5.6→4→2.8)として入れます。
ちなみにムービーの専門用語では、
絞り1段=1stop、 絞り⅓ = 1step、となり、
NDフィルターの番号は、
ND0.3=3step=1stop=絞り1段
ND0.6= 6step=2stop=絞り2段
ND0.9= 9step=3stop=絞り3段
ND1.2= 12step=4stop=絞り4段
1枚で足りない時は2枚重ねて使用します。
シネマレンズのアイリスリングは全て⅓ 段(1step)刻みです。
上記の事をこなすには、
シリーズの単焦点レンズ群と、MATBOXサンシェードと、角形NDフィルターを揃える。
PRAIM LENSの単焦点セットレンズに広角や望遠を足して6〜10本くらいを揃え、1番広い画角とアスペクト比にをカバーする大きさの角形NDフィルターとフィルターが2枚〜3枚入るMATBOXサンシェードを揃え、レンズとフィルターは頻繁に交換しながら撮影します。
Camera Bodyには色々なアクセサリーを付ける必要が有る。
これらのレンズ周りのアクセサリーに加え、
◎ワイヤレスフォローフォーカス(遠隔でフォーカス担当の助手がフォーカスをコントロールする機材)
◎トランスミッター(監督モニターなどに映像を飛ばす機材)
◎5〜7インチのモニター(フィンダーとして使用し、屋外でも見える明るい物。日よけのフードを付け、位置や角度を調節するためのアームも必要)
◎ バッテリー(カメラ本体、フォローフォーカス、モニター、トランスミッターの電源を賄うため、大きくて重いものになります)
さらに、電源をOFFらずにバッテリー交換出来たりする装備が有ります。
◎リグ(これら全てを装着すると重くなるので、頑丈なリグが必要。)
◎スライドベース、ブリッジプレート、ロッド(レンズやフィルターなどを変える場合に前後バランスを調節し、MATBOXサンシェード、フォローフォーカスなどを付けるための機材、カメラボディと三脚ヘッドの間に付ける。
150Φの大きな三脚ヘッドが必須
これらフル装備の重量を載せてスムースに操作可能な三脚ヘッドは
150Φ(ヘッド直径150mm)が多く使用されます。
ティルト時(カメラの上下に振るカメラワーク)にカメラの重さに負けず、 一定の力で90度角以上動き、適度なフリクションでスムースにカメラワーク可能なヘッドは、おのずと大きく重くなります。
望遠400mmで多少の風が吹いても、重量と堅牢さで画ブレをしません。
金属製の頑丈な三脚が必須
ロンフォードのBIG(大),BABY(小)が多く使用されています。
その理由は、
風に吹かれたりしても画ブレをしません。また、
高所の台の上や、自動車、乗り物の荷台など、間違ってもカメラが転倒する事の無い様には、ラッシングベルト(荷物固定用の金具で締め付ける機能の有るベルト)で固定する必要が有ります。
ラッシングベルトで締め付けても壊れないだけの堅牢さが必要なため、
重くて大きな三脚になります。
助手は2人以上必要
これらのフル装備のカメラ機材を組み、レンズBOX、予備のバッテリーBOX、アクセサリー類を管理して移動する為にはカメラマン+2人いないと
円滑に運ばないので、助手は2人以上必要になってきます。
助手の呼称は、チーフ、セカンド、サード、フォースの順です。
光は入射露出計とスポット露出計で測る
日本ではチーフが露出計で測るスタイルが定着しています。
入射露出計は演者の位置で照明のキーライト、タッチ、フィル、サイド、フットなど、それぞれのバランスを測り、カメラアングルが変わって照明が変わっても、『うまく繋がる様に』管理します。
フォーカスワークはピントを合わせるだけでは無い。
日本ではセカンドがフォーカスを担当するスタイルが定着しています。
演者の動きに合わせて、フォーカスを合わせるのが基本ですが、
重要なのは、『フォーカスを送る』事です。
演技の有る映画、ドラマ、CMなどでは、台詞と表情の間合いを見極めて、人物のAからBへ、『フォーカスを送る』事が多く有ります。
この時、演技にシンクロしたなめらかなフォーカスワークが必須です。