私はよくかわいいといわれる〈29〉
昼休みに屋上で瞑想をしてたら、後ろから羽交い絞めにされた。
すぐに胴体を足でカニばさみにされ、鼻の穴に指を突っ込まれ、缶ジュースの蓋を開ける要領で力が加えられ、鼻が清水アキラのテープ芸のようになる。
こんなことをするのは1人しかいないので、反応したら負けである。
この状態のまま私は森本君を中心に寝返りを打ち続ける。スカートが捲れてきたがここまで来て羞恥心を見せたらこいつのおもうツボである。すぐにスカートを両ももで挟んでそれ以上捲れるのを防いでリアクションをとらないようにする。戦いは中盤戦と言ったところか。とにかくこいつは私の女の部分を引き出そうとしていて、引き出されたら負けである。
「1月だぞ! ノート返しに来たら佐々木(絵美里)がたぶん屋上だって」
「1月にJKが屋上で瞑想してたら悪いかね?」
「悪いね。普通JKは屋上で瞑想なんかしない」
「それはあんたの偏見じゃないか」
「偏見で悪いかね?」
「ノート机に置いたらさっさと帰ればいいじゃないか」
「帰るか帰らないかは俺の自由だろ」
「…あたしの…負けだ…」
「どうしたんだ最近?」
「別にどうもしとらんが?」
「嘘つけ」
「…」
そこでようやく羽交い絞めが解けて2人で大の字になる。
そしたら金井君に跨った、つまりおんぶの状態で金井君に乗った美樹と金井君がやってきた。とうとう金井は美樹の馬になったのか。それにしても美樹は美樹で最近飛ばすなあと誰かに動画でも撮られてたらどうするんだと場違いな心配をよそに
「葵ちゃ~ん」とノー天気に私を呼ぶ。そして金井君から降りると大の字になっている私と森本君のお腹辺りにダイブしてきやがった。
「ぶふぉっ」と森本君の方に美樹の体重が多く乗ったらしい。
私の脇腹あたりで美樹は顔をこちらに向けて微笑んだ。