私はよくかわいいといわれる〈43〉
ファミレスは第2の自宅である。自宅よりも居心地が良いは言い過ぎかもしれないが、私はファミレスで生まれたのかもしれんと思うくらい好きである。であるならば自宅ではなく故郷というべきか。
帰郷である。郷愁である。
ドリンクバーは3杯ほど消費すれば元が取れるし、パンケーキ、パフェなどのスイーツも充実している。
1人の時は問題集やらノートを持って行き適当に広げて、周りの人の目線までも考慮に入れて完璧に景色の1部と化す。
私の成績はまずまずで、母親に成績表を見せるときは必ず試験にファミレスでやった問題が出ただの、あそこで集中したのがよかっただのと言ってファミレスの重要性をちらつけせるようにしている。その甲斐あって、母親は私がファミレスに行くと言えばファミレス代を気前よく出してくる。おそらく私を予備校や塾に通わせなくても進学してくれるのではないかということでその費用が浮くのならファミレス代など安いと思っているらしかった。
今日は放課後、学校の近くのファミレスに森本君、鈴音ちゃん、金井君と私でいる。
斜め前の席には4人の家族連れが座り、4歳前後だと思われる兄弟が怪獣のごとき奇声を上げている。子供が騒ぐのはまあしょうがないとして、びっくりするのは親がその兄弟の暴走を注意しないことだ。その親たちは怪獣の奇声を車のブレーキ音やクラクションのようにあたかも町の喧騒であるかのように無反応で、そういう家族や親子連れが普通にいるので何か多数決的に私の方がおかしいのかと思ってしまうくらいだ。
彼らにとってはその奇声が生活音程度のありふれた音なのかもしれないが、ファミレスは公園と違い、屋内の公共の施設であってそこにふさわしいマナーというものがあるだろう。
しかしJKの私に彼らを注意する気概なんてあろうはずもなくドリンクバーで継いだお紅茶などをすすっている次第である。