私はよくかわいいといわれる〈11〉
かと思えば金井君は絵美里が読んでいるライトノベルによく出てくるシュレディンガーの猫という物理法則の話を絵美里と楽しそうにしている。
なんでもその猫によって意識が現実を作ってるだとかこの世は並行世界がいくつもあるとかどうのこうのと、これがライトノベルの異世界ファンタジーものの設定によく使われたりしているらしい。
といった具合で金井君は舞香と絵美里とも話が合い、会話は途切れることなく小気味よく回っていく。
断っておくが金井君の物理の成績も1か2だ。1の時は赤点なので補修やら追加レポートやら追試などで難を逃れている。しかも将棋も弱いし、ギターも早くも限界を感じている彼だ。
そして繰り返すが9割以上が大学に進学する一応進学校のわが校だが、こいつは進学より卒業を目標にしているとしか思えないくらい人生をブン投げている…のにだ…輪の中にいれば会話の中心になり場が盛り上がる。
私は舞香が将棋の有段者であることや、絵美里がライトノベルが好きなことなんか全然知らず美樹や金井君が加わってから知ったことばかりだ。
たぶん最初の私たち3人はなんとなくここで固まるのが相場だろうって感じで一緒にいただけだったのだろう。
2人が加わって昼休みが楽しくなったのは間違いない。間違いないが…