私はよくかわいいといわれる〈15〉合唱コンクール (1)
合唱コンクール 鍋島葵
とある中学校の3年A組
「里奈…」美琴に呼ばれ里奈は小さくうなずく。
柏木里奈は古橋美琴の親友兼保護者だ。身長が高くてきりりとした里奈と、小動物のようなかわいらしさの美琴はいつも一緒にいた。昼休みに美琴の決行に付き合うので里奈も一緒に屋上に行く。そこにはC組の山下がいた。山下はにやにやしながら気持ちの悪い顔でこっちを見ている。しかし寄りにもよって美琴は何で山下なんかを…里奈は心の中でため息を漏らす。
「山下君」美琴は小さく名前を呼ぶとその時
「山下君!」
もうひとつの声がしたかと思うと、刺さるよう香水の匂いが里奈の鼻をかすめる。声の主はB組の相沢美玖だった。
「俺は相沢も古橋も好きだから二人と付き合うよ」
山下はへらへら笑いながら言った。
「ちょっと待ちなさいよ!」
結局後ろで聞いてた里奈が割って入った。
「あんたねえ、バカじゃないの?」
「だって本当に二人とも好きなんだからしょうがないじゃないか」
「美琴行くよ!」里奈は美琴の手を引こうとする。
「わかったよ。一人に決めればいいんだろ?でもどうする?くじで決めるか?本当に二人とも同じくらい好きなんだ」
「それは…」
「よし、じゃあこうしよう。今度の合唱コンクールで順位の高いクラスのほうと付き合うことにするよ。だったらまだ努力のしようがあるだろ?俺はC相沢はB古橋はAでちょうど別々のクラスだからな」
「はあ?あんたさっきからなに言ってるの?そういうことじゃないでしょ!」里奈の怒りは止まらない。
「わかったわ!」その声は美琴だった。美琴は変なところで潔い。
里奈は振り返って美琴を見る。目で本当にいいのか聞く。美琴はうなずく。もう一度聞く。美琴はもう一度うなずいた。
「相沢は?」山下が聞く。
「いいよそれで」相沢美玖は不敵に笑った…