私はよくかわいいといわれる〈41〉
美樹の取り巻きの男子と女子Bが付き合っているようだ。前から付き合っているのかもしれないが最近になって隠さなくなり完全に「付き合ってる感」を全開にしている。
2月だからそんな季節かと思い、そういえば先日駐輪場の桜の木の下で森本君と女の子がいたのをちらっと見た気がした。見覚えがあったその子はおそらく森本ガールズの1年のひとりなのだろう。
時間的に部活(サッカー部は休み日)の生徒は部活中で下校する生徒は下校しているので、人目に微妙につきづらいといえば付きづらく告白するならその場所と時間なのだろう。私は金井君と美樹と馬鹿話をしてたのでこの現場に居合わせてしまった。
全部推測だが、その子は14日に誰かに森本君をとられたら遅いのでそれより前に決行したのであれば、告白される側は森本君なはずで、ちらっと見た森本君の表情は少なくてもうれしそうではなかった。その後どうなったかは知らんが。
しかし取り巻きの中で誰かが付き合い始めるのだろうなと思っていたが、言うても美樹の取り巻きである。男子は全員美樹のことが好きなわけだから、女子としては妥協されたのはさすがに分かっているだろう。その辺の折り合いをまあどうにか付けたんだろうなと思うと、ロマンをとるか手の届く現実をとるかまで掘り下げれば、こういう問題は私を含めすべての人間に当てはまることではある。
取り巻きたちを笑うこともできんなあなどと、甘い理想論では解決できぬ現場性というものを目の当たりにした気がして、本人たちはもしかしたらものすごく幸せなのかもしれないのに、私の方がなぜか神妙な気分になってしまった。