私はよくかわいいといわれる〈46〉
7人で屋上にいる。「昼休みの快晴無風の時は屋上同盟」を、どうやら私が作ったらしい。屋上で7人で輪になっているそれは、どう見ても怪しげな自己啓発サークルのそれである…単発的に屋上に来る生徒の二度見が少々痛いが、視線が合えば私は目で「違うねん、ただ仲がいいだけやねん」と訴えかける。生徒はかすかにうなずいたことにして心の平静を保っていると、金井君がまた「あっ」と言った。
私の丁度向かいに座ってる金井君は通信機器を見ながら、あちゃー、という感じで髪をかき上げる。また駒をとられたらしい。横に座って同じく通信機器を見ている舞香が「中盤でよくしようとしすぎなのよ」と言った。
「中盤はもっと局面を複雑にしなきゃ。金井君は狙いが分かりすぎてこっちも読むのが簡単なのよ」と舞香が言って
「なるほど…」と金井君が反省する。
「今詰将棋はなん手詰め解いてるの?」と舞香が聞けば
「5手詰めを少々…」と金井君が言って
「5手詰めかあ…」と悩まし気に答えた舞香は、できの悪い弟子を持った師匠のようだった。
私の隣の森本君はあぐらで両手を後ろにつっかえ棒にして空を見ている。
舞香とは逆の金井君の隣にいる美樹は金井君のあぐらの太ももを枕にしてブランケットを寝袋のようにぴったり巻き付けて寝ている。もう完全に寝に屋上に来ている。
鈴音はその光景を見ているだけで楽しそうだ。
舞香の隣に座ってる絵美里は「俺の専属メイドになった悪役令嬢は毎晩俺のベッドで異世界に転生する」という成人ビデオの作品名と見分けがつかぬ題名の本を読んでいる。それ本当にライトノベルなんだろうな?と思っていると森本君も同じことを思っているらしく
「佐々木(絵美里)さんそれ、ライトノベルなの?」と聞けば
「大丈夫だから」と噛みあってるのかあってないのかわからぬ返答を絵美里がしていた。