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【創作童話】フェルトねこのクリスマス
ここは、まちのちいさなおもちゃやさん。
フェルトでできた、ぬいぐるみのねこたちが、くらしていました。
「もうすぐクリスマスだね」
しろいねこは、トナカイのふくをきています。
「みんながほしいものは、メモにかいてあるよ」
くろいねこは、サンタクロースのふくをきています。
きょうは、サンタクロースのおてつだい。
ふたりは、こどもたちにくばるクリスマスプレゼントをつくるおしごとをしていました。
フェルトねこたちがそうぞうしたものは、ほんものになります。
『えほん』といえば、えほんがでてきます。
『ゲーム』といえば、ゲームがでてきます。
サンタさんがかいてくれたメモには、こどもたちのほしいものがかいてあるので、ふたりは、メモをみながら、プレゼントをだしていくのです。
「クルマのおもちゃは、ゆうくんに」
しろねこがいうと、クルマのおもちゃがあらわれました。
「おっ!カッコいいね」
さっそく、はこにしまって、あおいリボンをつけました。
「おにんぎょうは、さきちゃんに」
くろねこがいうと、おにんぎょうがあらわれました。
「わぁ!かわいい」
やさしくだきあげると、ピンクのふくろにいれました。
「プレゼントは、まだまだたくさんあるよ。どんどんつつんでいこう!」
ふたりは、クリスマスイブにまにあうように、おおいそぎでつつんでいきました。
サンタさんのメモの、いちばんさいごにかいてあるのは、
『おおきくて、おもいでにのこるクリスマス』
けれど、でてきたのは、ぎんいろのちいさいすずがひとつだけでした。
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ふたりは、すずをどうするかかんがえました。
「こんなちいさいすず、どうする?」
しろねこがいうと、
「プレゼントにするかい?」
くろねこがいいました。
「これ、だれがほしがるんだい?」
「だぁれも、ほしがらないだろうね」
「それじゃあ、つつんでもしかたない」
「それじゃあ、かたずけてしまおうか」
すると、ぎんいろのちいさいすずが、しゃべりだしました。
「さぁ、ぼくをふくろにいれて、リボンをかけてよ」
ちいさいすずは、ほかのプレゼントとおなじように、きれいにつつんでもらえるとおもっているのです。
しろねことくろねこは、ちいさいすずを
かたずけるのをやめました。
ふたりは、めのまえのぎんいろのちいさいすずを、クリスマスプレゼントにするほうほうをかんがえました。
「ちいさいすずくんを、くまのぬいぐるみのくびのリボンに、ぬいつけたらどうだろう?それなら、りっぱなクリスマスプレゼントになるだろう」
しろねこは、ふくろにいれたばかりのくまのぬいぐるみをとりだすと、ちいさいすずくんに見せました。
くろねこも、さんせいしました。
「そうだねー。おおきさもちょうどいいよ。うん、ぴったりだ! ねぇ、そうしなよ」
ふたりは、これでちいさいすずくんも、よろこんでくれるだろうとおもいました。
ところがすずくんは、しかめっつらで
「そんなのイヤだ!」
と、いいました。
「どうしてだい? とってもにあうとおもうのに」
しろねこが、すずくんにくまのぬいぐるみをみせながらいいました。
「きみのあこがれの、クリスマスプレゼントになれるんだから。ずっとおへやで、だいじにかざってもらえるよ」
くろねこもいいました。
けれど、すずくんは、
「それじゃ、イヤなんだ!」
と、くまのぬいぐるみから、プイッとかおをそむけてしまいました。
「だって、それじゃあ‥‥‥。ぼくは、くまのぬいぐるみのオマケじゃないか!」
というのです。
「オマケ‥‥‥って?」
「ぬいぐるみがきにいらないのかい?」
しろねことくろねこは、たずねました。
すると、ぎんいろのちいさいすずは、
「せっかくクリスマスプレゼントになるんだから、ぼくがしゅやくでなくちゃ、イヤなんだよ」
とこたえました。
ちいさいすずくんは、じぶんひとりで、クリスマスプレゼントになりたがっているのです。
しろねこは、くまのぬいぐるみをみながらおもいました。
(たしかに、このままだと『クリスマスプレゼントになにをもらったの?』ときかれたこどもは『くまのぬいぐるみ』とこたえるだろうな)
くろねこもかんがえました。
(たしかに、このままだとくまのぬいぐるみがしゅやくで、ぎんいろのちいさいすずがしゅやくとはいわないだろうね)
「くまのぬいぐるみにくっつくなんて、ぜったいにイヤだからね!」
すずくんはとびはねて、チリンチリンと、おとをたてました。
「でも、ちいさいすずくんをしゅやくにして、プレゼントにするなんてできるのかなぁ?」
しろねこは、かんがえました。
「ちいさいすずくんがしゅやくになるような、クリスマスプレゼントかぁ」
くろねこも、かんがえました。
「なんだよ。ちいさいちいさいって、ぼくをバカにして!」
すずくんは、ふてくされて、またチリンチリンとおとをたてました。
そして、たくさんのプレゼントのうえにのぼっていくと、はこのうえでねむってしまいました。
「あぁ‥‥どうしよう」
ふたりは、かおをみあわせました。
くろねこは、しばらくかんがえてから、
「すずくんはプレゼントにするよりも、かざってあったら、きっとキレイだろうなぁ。キレイなおともするし」
といいました。
しろねこは、てをポンとたたきました。
「それじゃあ、いいかんがえがある。あのぎんいろのちいさいすずくんがしゅやくになるばしょは、あのまちのクリスマスツリーさ」
「クリスマスツリー? あのまちって、どこだい?」
「いいから、いいから。さぁ、すずくんがおきないうちに、かざりつけてあげようよ」
ふたりは、すずくんをとおくのまちにはこんで、クリスマスツリーのてっぺんにかざりました。
しばらくして、ちいさいすずくんがめをさますと、きゅうにじぶんのからだがおおきくなったようにおもいました。
めのまえに、ちいさなまちがあるのです。
すずは、ありんこのまちのクリスマスツリーのてっぺんにいました。
ありたちは、クリスマスツリーをみあげて、
「すてきなすずがついているね」
「かぜがふくたびに、いいおとがするね」
と、おおよろこびです。
ここでは、すずを『ちいさい』というひとはだれもいません。
ぎんいろのすずくんは、しゅやくになれたのです。
「もしかして、サンタさんのメモの、いちばんさいごにかいてあった『おおきくて、おもいでにのこるクリスマス』って」
「きっと、ありさんたちのねがいだったんだね」
しろねことくろねこは、かおをみあわせて、にっこりわらいました。
「ありがとう!フェルトねこさん。きみたちは、りっぱなサンタクロースだよ」
ぎんいろのすずくんは、クリスマスツリーのてっぺんで、うれしそうにチリンチリンと、おとをたてました。
おしまい
「灯火物語杯」inクリスマスに参加させていただきました。
お読みいただいた皆様、ありがとうございました♪素敵なクリスマスをお過ごしください。
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