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英雄という名の猫

引き裂かれ離される、反発の大地。
会わせ引き求める、融合の精。
今ここに集い、目覚める……永遠の英知。
とわに一つなる、二つの大地。
とわに二つなる、一つの大地。
英知なる永地。
栄え滅びし、輪廻の中に……。

イラ・ルッド(著)『創世記元年史』より

プロローグ

何度となく崩されては、また積み上げられたようなレンガ塀が、どこまでも跡絶えることなく闇の中へ続いている。
この無表情なレンガ塀は、2つに分けられた猫の国の絶対的な境界として、もう2度と崩されることもなくそびえ続けるのだろうか………。

レンガ塀の起原は、かなり昔の話になる。
そう……今この国に暮らす者たちは、壁が造られた頃のことなど知らない……。
ただ、〔決してこの壁を壊してはならない〕と、その昔壁を造ったご先祖様から、きびしく語り継がれていた。

壁を壊したら最後。その向こうから悪魔がなだれ込み、国は滅ぶ……と。

この恐ろしい言い伝えが、いまだに効力をもつこの世界では、もう誰も壁の向こう側を知ろうとはしなかった。

どんな時代のどんな世界にも、こういった訳もわからなくなってしまった“シキタリ”みたいなものはある。
そしてまた、その“シキタリ”に真向から挑み、形だけの掟を破って真実を突き止めようとする、勇気ある者も必ずいるものだ。

この2つの国にも、それぞれにそういう英雄(えいゆう)がいるのである。


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