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蒼の彼方のフォーリズム〜鳶沢みさきルート感想〜

『蒼の彼方のフォーリズム』感想文第四弾。最後の攻略ヒロインは鳶沢みさきちゃんです。一番気になってたヒロインだったので、あえて最後に取って置きました。ネタバレあります。みさきルートだけでなく、明日香ルートにも触れています。これからプレイ予定の方、ネタバレ回避したい方は気をつけてくださいね。


こんなヒロインだよ

何でも平均以上に出来ちゃうゆえに、何事にも真剣になれない子。それが初期の印象。

黒髪ロングでなんとなくクールな性格をイメージしてたけど、予想とは全然違うタイプだった。

余裕そうに見えてメンタル弱いとか。実は負けず嫌いとか。人間味あるところがスゴイ好き。

自分でも意外だったけどみさきに共感する部分もあった。

好きなものに対して真っ直ぐな明日香に苦手意識や眩しさを感じるところとか。明日香のことは好きだけど黒い感情を持ってしまうところも分かる。

そこまで真剣になれるものがない自分と比べたり。それを人に言えるところも私は好感持った。

みさきは性格的には猫っぽいというか。マイペースで掴みどころがない。

影があるルート

ルートの入りぐらいはけっこう暗いなと思った。

絵とかも影があって。才能に打ちのめされる。暗い感情を刺激されるルートになってる。

怖いって感情をめちゃくちゃ味わった上で、それでも立ち向かっていく物語だと思った。怖いと楽しいって表裏一体なのかも。挑戦してみたい。その思いの影に恐怖がある。

これを体験したらどうなるんだろう。あれをやってみたらどうなるんだろう。何が見えるんだろう。何を感じるんだろう。本当は体験したいのに真っ直ぐそこに向かっていけない。

みさきルートはそんな恐怖の感情を払拭することなく持ち続けながら進んでいく。怖いって感情を肯定するストーリーだった。

勝ちたいって気持ちが好きって出て来てたけど、私にはない発想で面白かった。気持ち自体を好きになるなんて考えたこともない。そういう考えもあるんだってまた自分の視野が広がったカンジがする。

こういう新しい価値観や発想に出会えるのも楽しいの一つだよね。

ちなみに影があるルートと書いたけど、本作品はベースが明るいのでそのまま落ちてゆくとかない。前向きに受け止めて、前向きな結末を迎える。

どこまでも爽やかさがある作品です。

薄々思ってたけど…

やっぱり、晶也くんの因縁の相手ってみさきだったんだ。

どこかで晶也くんの幼い頃が女の子に見えるって描写あって。その因縁の男の子ってまさか〜って思ってたけど。

判明したらどうなるかなって思ってたけど、晶也くんはみさきと共に克服する道を進むんだ。

晶也くんが数年かけて身につけてきたことを、数時間で越えられそうになった。今までの自分ってなんだったんだってなるし、努力の意味を問いたくなるし、才能を目の当たりにしてかなわないって思っちゃう。自分に置き換えても挫折すると思う。

自分以上に出来る人がいるのにやる意味あるの? って思う気持ち分かるなぁ。

晶也くんがみさきを見て挫折して、そのみさきも明日香で挫折してしまった。

みさきの劣等感。負けず嫌いだからこそ、負けるのが怖いって気持ち痛いほど分かる。

対比になっている?

みさきの物語は、明日香とは正反対。好きゆえの怖さを感じた。

みさき自身が明日香を強く意識してるのもあって、二人のルートは表裏になってる気がする。

明日香ルートは前向きに明るく進んでいくけど、みさきルートはネガティブな気持ちと向き合っていく。挫折して止まったままだけど、また空に帰る物語になってた。

みさきと晶也くんが同じ立ち位置にいるから、同じ方向を見つめて二人三脚で進んでる。

晶也くんの過去に直接関係してたのはみさきみたいだから。ネガティブな感情にフォーカスしてるね。

でも、『蒼の彼方のフォーリズム』はメッセージも作風も明るいから、そこまで重さはないです。

普通にまたみさきが部活に復帰して、自分たちの課題を乗り越えようとしてるし。

お互いの傷を癒す

みさきからの告白で、正式にお付き合いすることになった二人。晶也くんが自分の気持ちに気付く描写あったけど、入り方は唐突感あるな。

そういう空気は感じたけど、みさきは他の子より分かりにくい。そこまで好きって表に出してなかったもんね。意外と反応がウブで可愛かった。デレた時のギャップが一番ある気がする。

ふざけてしまうか、本気になってしまうか。極端な選択肢しかないのも面白い子だなって思った。

恋愛面よりお互いの痛みを癒すって関係性にグッと来た。みさきは晶也くんを。晶也くんはみさきを。空に届けるために。

苦しい思いに温かい光を当てて、癒し合うって感じがした。

ラストバトル

ラストバトルがまさかのヒロイン対決。この物語では選手自身を怖いと表現するけど、私は明日香が一番怖かった。もちろん明日香も落ち込んだりするんだけど、明日香ルートをクリアしてそう思うようになった。何でも楽しいに変えてしまえるのって最強だと思ってて、憧れと畏怖みたいな気持ちが沸いてくる。

この子には敵わないって思わされてしまう。そんな存在感が明日香にはある。色んな強い選手出てくるけど、物語の中で最強なのは明日香だと個人的には思った。

逆にみさきは凄く安心する。みさきも凄い子なんだけど、たぶん私達に近いのはみさき。ネガティブな感情に囚われて悩んだり動けなくなったり。そこから色々考えて、進んで……。

力強さというより、ナチュラルで自然体で、どんな自分もありのまま受け入れて。どこにも力が入ってない。そんな素の強さを感じたな。そこまでド派手な演出がなかったのも、みさきらしい気がした。

どちらにもそれぞれ違った魅力があって良いよね。キャラルートも二人の個性をそのまま反映させた内容になってて良いと思った。

みさきルートは楽しさを最大限に追求するというより、自分を取り戻すためのFCに見えた。

明日香は火みたいだと思ってたけど、みさきは風みたいな子だと思ったな。

まとめ

ルートによって晶也くんの運命って変わるけど、晶也くんが立ち直るまでの描写が一番丁寧だったのはみさきルートだった。

どんなに怖くても遠ざけても、本当は空を飛びたいのが本心だと思ったし。

今までは恐怖の方が強かったんだろうけど、みさきを見て、みんなを見て、恐怖よりも飛びたいって気持ちが勝ったんだろうな。

怖さの良い面を見つけて、そこを上手に使う。怖くても良いんだ。怖さがあっても大丈夫なんだって、自分を丸ごと肯定できる。素敵な物語だった。

セコンドではなく、選手として一からやり直すことを選んだ晶也くん。みさきルートは、晶也くんルートでもあったなって思った。


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