見出し画像

【徹底チェック】コメティックは本当に無罪なのか?【シャニマス法】

みなさん、こちらのnoteをご存じでしょうか。

現在話題沸騰中の、シャニマス楽曲の歌詞をリーガルチェックしていく記事です。これがめちゃくちゃ面白くて
元ネタは「こたけ正義感」さんの有名曲の歌詞をチェックするネタなんだそうですが、これをシャニマス楽曲で行うことで、歌っているアイドルたちのキャラクターと歌詞の違法性が独特の化学反応を起こしています。
また、法律知識の説明も簡潔かつ適度に読み応えがあり、一種の法学入門としても良い記事だなぁと感心しました。

しかし

一点だけ、気になるところがあります。

黒がテーマカラー、いつもどこか悲観的な歌を歌っているコメティック。コンセプト的に何かイリーガルな歌詞があってもおかしくなさそうですが……

なんか、めちゃくちゃ現代社会を嘆いているだけで、特に違法な点は見当たりませんでした。


結論:コメティック、無罪

にんじん「【全部違法】シャニマス楽曲リーガルチェック【こじつけ】」

そんなことある???

いやだって、あのアルストロメリアも、あのイルミネーションスターズも引っ掛かってるリーガルチェックですよ?
放課後クライマックスガールズにいたっては、革命を成功させなければ首謀者が死刑又は無期刑というところまで追い込まれています。

そんな中で、反抗、諦念、毒気といった要素がふんだんに盛り込まれているイメージのあるコメティック楽曲が無罪というのは、いくら何でも受け入れがたい!!

ということで、本記事ではコメティック楽曲の適法性を「徹底チェック」していくことにしました。

チェックの方法ですが、コメティックは楽曲数が少ないですから、今までに発表されたコメティック楽曲を全てみていくことにします。

また、先行するリーガルチェックによりいくつかの罪責について「判例」が形成されていますから、本記事ではその「判例」を参照しつつ、法的安定性の担保されたリーガルチェックを目指していきます。
それでは、いってみましょう!

※この記事はジョークであり、多くのこじつけが含まれます。また、一学生が作成しているものですから、法律知識について正確性を欠く可能性があります。あらかじめご了承ください。


1曲目 無自覚アプリオリ

さて、1曲目の冒頭から、いきなりこんな歌詞にぶち当たりました。

コペルニクスもびっくり 

革命

『無自覚アプリオリ』

はい内乱罪(刑法77条)


……いえ、早合点してはいけません。
元記事ではコメティックの罪責に対し「コペルニクスもびっくり!七草弁護士もにっこり!よかったね!!!」と、この曲の歌詞を引用してコメントを寄せています。検討していないとは考え難い。

ここは、実際に内乱罪が成立した放課後クライマックスガールズの『学祭革命夜明け前』と『無自覚アプリオリ』とで事案が異なると見るべきでしょう。

改めて『学祭革命夜明け前』の事案を観察してみます。

そうだ そうだ

跳べ 跳べ 跳べ 跳べ Yeah

革命だ

『学祭革命夜明け前』

放課後クライマックスガールズの皆さんが、元気に「国の統治機構を破壊し、又はその領土において国権を排除して権力を行使し、その他憲法の定める統治の基本秩序を壊乱することを目的として暴動をし」(刑法77条)ている様子が目に浮かびますね。

しかも曲の最後には

革命だ

革命だ

『学祭革命夜明け前』

高らかに二度、宣言しています。これでは内乱罪の成立を避けることは難しいでしょう。革命の成功を祈るしかありません

では、『無自覚アプリオリ』はどうでしょうか。
引用した歌詞はこう続きます。

コペルニクスもびっくり

革命 脳内戦争

暗にずっと 気づいてた

『無自覚アプリオリ』

「革命」の後には、「脳内」「気づいてた」という言葉が出てきました。
加えて、冒頭に付された「コペルニクス」の名前。コペルニクスといえば地動説の提唱ですが、このことから「コペルニクス的転回」として、考え方の根本的転換をあらわす言葉が生まれています。
これらの周囲の事実を統合した際に、コメティックの「革命」は放クラの「革命だ!」と同視できるのか?

答えは否でしょう。この「革命」はおそらく観念的なもので、「国の統治機構を破壊し、又はその領土において国権を排除して権力を行使し、その他憲法の定める統治の基本秩序を壊乱することを目的として暴動をし」ているとは言えません。
彼女たちはまさしく、「なんか、めちゃくちゃ現代社会を嘆いているだけ」なのです。

結論:内乱罪、不成立。


ですが、『無自覚アプリオリ』にはまだ適法性が疑わしい歌詞があります。

さあさあ 連れ出しましょう

烏合の衆よ

何回だって 言葉を 

飲み込んだんだろう

『無自覚アプリオリ』

これは、イルミネーションスターズ『Forward March!!!』が引っかかっていた、東京都集会、集団行進及び集団示威運動に関する条例に抵触する可能性があります。

「鼓笛隊のリズムでマークタイムマーチ」する時に許可が必要というのはイメージしやすいですが、同条例は「道路その他公共の場所で集会若しくは集団行進を行おうとするとき」(1条)に許可を必要としています。

第一条 道路その他公共の場所で集会若しくは集団行進を行おうとするとき、又は場所のいかんを問わず集団示威運動を行おうとするときは、東京都公安委員会(以下「公安委員会」という。)の許可を受けなければならない。但し、次の各号に該当する場合はこの限りでない。
一 学生、生徒その他の遠足、修学旅行、体育、競技
二 通常の冠婚葬祭等慣例による行事

東京都「集会、集団行進及び集団示威運動に関する条例」
強調は筆者による、以下同様

つまり、烏合の衆を連れ出す際にもその場所が「道路その他公共の場所」であれば、公安委員会の許可が必要な可能性が出てくるわけです。

では、コメティックはこの許可をとっているのか?
『Forward March!!!』判決は「無許可なら」という条件つきの違法となっていましたが、『無自覚アプリオリ』は事案が異なります。

以下の条文をご覧ください。

第三条 公安委員会は、前条の規定による申請があつたときは、集会、集団行進又は集団示威運動の実施が公共の安寧を保持する上に直接危険を及ぼすと明らかに認められる場合の外は、これを許可しなければならない。但し、次の各号に関し必要な条件をつけることができる。
一~三 略
四 集会、集団行進又は集団示威運動の秩序保持に関する事項
五~六 略
2~4 略

東京都「集会、集団行進及び集団示威運動に関する条例」

次に、先に続く歌詞を。

何回だって 言葉を 

飲み込んだんだろう

多様性出せ?

でも列乱しちゃダメ?

『無自覚アプリオリ』

列乱しちゃダメ?」、この歌詞からは、集団行進において列を崩さないように指示が出ていることが読み取れます。
それはすなわち、「集会、集団行進又は集団示威運動の秩序保持に関する事項」に関する「条件」が付されているということ。

そして条件が付されるのは……そう、「許可」です

『Forward March!!!』の事案と異なり、『無自覚アプリオリ』の歌詞からは、コメティックの3人が事前に許可申請書を提出し公安委員会から許可を得て秩序保持に関する条件を遵守しながら集団行進を行っているということが、はっきりと読み取れるのです。

なんて遵法意識の高いユニットなんだ、コメティック。

結論:東京都公安条例違反、不成立。


2曲目 平行線の美学

私は違うって 

乱れない隊列

自己主張はめいっぱい

『平行線の美学』

集団行進はまだ継続中のようです
許可を得て秩序保持条件を遵守している以上、当然違法性はありません。

では、次の歌詞はどうでしょう。

なるほど、尊重すべきは個性で

転ぶように罠はって

失敗は餌になって

糧になりがちなんだね

『平行線の美学』

アルストロメリア『ハピリリ』の「上手にちょっとぶつかって」に暴行罪(208条)が成立することからすれば、実際に人が転ぶように罠をはっていれば、暴行罪が成立しそうな気がしてきます。

しかし、コメティックのこの歌詞は……

それで誰か幸せになるんですか?

『平行線の美学』

どうも現代社会を嘆いているだけっぽい。

結論:暴行罪、不成立。


3曲目 ハナムケのハナタバ

適法性に疑いがあるとすれば、ここでしょうか。

もう間に合わないと知ってても

駆け出した

夜明け前の街

『ハナムケのハナタバ』

東京都青少年の健全な育成に関する条例15条の4第2項は、午後11時から午前4時までの深夜において、青少年(18歳未満の者)を連れ出し、同伴することを禁じています

第十五条の四 保護者は、通勤又は通学その他正当な理由がある場合を除き、深夜(午後十一時から翌日午前四時までの時間をいう。以下同じ。)に青少年を外出させないように努めなければならない。
2 何人も、保護者の委託を受け、又は同意を得た場合その他正当な理由がある場合を除き、深夜に青少年を連れ出し、同伴し、又はとどめてはならない
3~4 略

東京都青少年の健全な育成に関する条例

コメティックのメンバーの年齢は、斑鳩ルカ20歳、鈴木羽那18歳、郁田はるき17歳
いつかじゃない答えを今知りたいと駆け出したカラーレス・アイドルたちの歩みは、青少年郁田はるきの健やかな成長のため、条例違反となってしまうのでしょうか……?

いいえ、その心配はありません。

キーワードは「夜明け前の街」です。

国立天文台「東京(東京都)のこよみ 日の出入り」

国立天文台の観測データによれば、2024年のもっとも早い日の出時刻は、6月5日~20日の午前4時25分

一方で深夜は午前4時まで

たとえコメティックが駆け出したのが夏至の日であったとしても、「夜明け前の街」であれば、深夜にはあたらないのです。

なんで別れは来るの?

このままじゃいけないの?

『ハナムケのハナタバ』

答えを知りたいと逸る鼓動を抑えながら、ルカと羽那は夜明け前を待ちます。

全てはそう


郁田はるきの健やかな成長のために————。

結論:東京都青少年の健全な育成に関する条例違反、不成立。


4曲目 くだらないや

こんなnoteを書いている時にこの曲名が出てくるとドキッとしますね。
そんなことはさておき、『くだらないや』の歌詞ですが……

適法性が疑われる歌詞は、見つけられませんでした。

結論:適法


5曲目 Heads or Tails?

ラストは先月末にリリースされたばかりの最新曲です。
これまで4曲、時に適法性を疑われながらも無罪のまま軽やかに乗り切ってきたコメティック。このまま無罪で徹底チェックを終えるのでしょうか……?

ですが、この曲には明らかに適法性の疑わしい箇所があります。

些細な中傷

気づけば重症

皮肉な引力

その悲劇の結末知ってる?

『Heads or Tails?』

これは……侮辱罪(刑法231条)でしょう!

第二百三十一条 事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、一年以下の懲役若しくは禁錮若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。

刑法

侮辱」とは、人に対して侮蔑的な価値判断を表示し、社会的評価や名声等の外部的名誉を傷つけることをいいます。また「公然と」とは、基本的には不特定又は多数人が認識しうる状態を指します。
一方で、「中傷」はありもしないことをわざと言いたてて他人の名誉を傷つけることをいいますから、それが些細であれなんであれ、公然となされれば少なくとも侮辱罪に該当することになります(事実の摘示を伴う場合には名誉棄損罪(230条)になりえますが、ここでは割愛します)。

侮辱罪といえば、昨今のインターネット上での誹謗中傷の社会問題化をうけ、令和4年(2022年)に法定刑の引き上げが行われた犯罪
改正前は拘留(30日未満)又は科料(1万円未満)であったところに、1年以下の懲役・禁錮と30万円以下の罰金が加わり、これにより公訴時効も1年から3年に変わりました(刑事訴訟法250条2項6号、7号)。

コメティックはその軽妙なリリックに任せて、今最もホットな犯罪の一つを犯してしまったわけです。まさに「気づけば重症」。

ネット巧者郁田はるき、痛恨のミス

結論:コメティック、有罪……?

まぁ結論を急くことはありません。
せっかくですから最後まで歌詞を見てみましょう。

塵を散らしながら走る

彗星のように

(余計な感情 喰らって燃焼 そうやって)

光ってくんだ

罪・無罪 自由自在

時代次第さ そう一切合切

『Heads or Tails?』

おや?


罪・無罪 自由自在

『Heads or Tails?』



おしまい


いいなと思ったら応援しよう!