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  • 小説『縄文旋風』 第11話~第17話

    『縄文旋風』の11話から順に、17話まで。

  • 小説『縄文旋風』 第1話~第10話

    『縄文旋風』の1話から順に、10話まで。

  • 『縄文旋風』副読本

    縄文時代に関する雑記集

  • 用語説明

最近の記事

縄文旋風 第17話 鬼界カルデラ

本文       ハニサのムロヤ 「わー、たくさん、道具持ってるんだね。この石って何の石?」 「珍しいだろう。瑪瑙(めのう)って石だよ。黒切りは切れ味抜群だが、硬い物には弱い。鹿の骨を削ったりするのには向かないだろう。そんな時には瑪瑙がいい。刃こぼれしにくいんだ。」 「そうなんだ。この石は?」 「ネフ石だ。おれの斧はこの石だよ。ヒスイと同じくらい堅いんだが、ヒスイよりも研ぎやすい。瑪瑙も結構堅いから普通の石では割れない。こいつを使って割るんだ。」 「あ、もっと明るくしよう

    • 縄文旋風 第16話 ヒゲ小噺

      本文 「兄さんおはよう!  ヒゲ剃ってあげる。ヤッホも剃ってあげるよ。」 朝の広場である。ハギとヤッホがグリッコを食べていると、ハニサが来てそう言った。ハニサのムロヤがシロクンヌの宿となった翌日だ。 いきなりの出来事にハギは目を剥いて驚いたが、ヤッホは踊り上がって喜んでいる。 「やったー!  ハギ、おれが先でいいよな!  やっとシロクンヌよりおれの方が良いって気づいてくれたか。いつかおれの元に来てくれるって思ってたけど、意外に早かったな。おれ、ハニサにヒゲを剃ってもらうのが

      • 縄文旋風 第15話 縄文海進

        本文      夕食の広場 シロクンヌがウルシ村に来てから二度目の夕食である。今回もササヒコの計らいで大ゴザが敷かれた。ただし場所は村の出口付近ではなく、いろり屋と広場中央の焚き火の中間だ。 シロクンヌの周りには、昨夜と同じような面々が座っている。子供達と同じように、大人だってシロクンヌの話を聞きたいのだ。 一旦、登場人物紹介 シロクンヌ(28)タビンド シロのイエのクンヌ ムマヂカリ(26)大男 タマ(35)料理長 ササヒコ(43)ウルシ村のリーダー コノカミとも呼

        • 縄文旋風 第14話 グリッコベット

          本文 シロクンヌとハニサはムロヤを出て夕食の広場に向かっていた。すると子供達が駆け寄って来てシロクンヌの腕を取る。 「遅い遅いー!  シロクンヌ、早くー!」 子供達に引っ張られ、シロクンヌは広場の真ん中に連れて行かれ、子供達に囲まれた。一人取り残されたハニサは軽く溜息をつく。「こうなると思ってた。炊事の手伝いしよう。」 広場ではシロクンヌが子供達から急かされている。 「シロクンヌー、遅いよー!」  「お話ししてくれるって約束だったでしょう。」 「ん?  約束したっけか? 

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        • 小説『縄文旋風』 第11話~第17話
          7本
        • 小説『縄文旋風』 第1話~第10話
          10本
        • 『縄文旋風』副読本
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        記事

          縄文旋風 第13話 ハニサのムロヤ

          本文 「あれがあたしのムロヤだよ。ちゃんと宿せたら、あそこがそのまま産屋(ウガヤ)になるの。」 ハニサは嬉しそうだ。 すでに二人は、ヌリホツマの言いつけに従い大ムロヤの神坐の前で絡み縄を綯(な)い、お参りを済ませていた。それからハニサにせかされるようにして、シロクンヌは荷物を持って大ムロヤを出たのだ。ハニサは、とにかく早くシロクンヌに新居を見せたいらしい。これから始まる二人の暮らしが楽しみでしょうがない、そんな風に見える。 「軒下の梁(はり)が二重になってるでしょう。ああな

          縄文旋風 第13話 ハニサのムロヤ

          縄文旋風 第12話 コウヤマキ

          本文 森の入口 飛び石を渡り、右手の小山をぐるっと迂回すると森の入口に出る。その先には広大な原生林が広がっているのだが、そこに一本のコウヤマキの大木がそびえていた。 「あれがそうだ。立派であろう?」 ササヒコが自信たっぷりにシロクンヌを見た。たしかに真っ直ぐな木筋の良木だ。 「見事な槙の木だ。それに場所もいい。これなら申しぶんない。 こっちに倒せば地に着きそうだし、 地に着けば、後はおれ一人でも作業はできる。前が広いから、そのまま作業場にしてもいいな。枝も多いし色んな物が

          縄文旋風 第12話 コウヤマキ

          縄文旋風 第11話 ウルシ村案内

          本文 「ここがどんぐり小屋。木の実なんかを貯めておく所。ヨイショ!」 重そうな立て戸をハニサがずらし、そのすき間からシロクンヌは小屋に入った。中は無人だ。炉では細々と柴が燃やされていたが、少し煙っている上に、なかなかに薄暗い。目が慣れるのを待って室内を見渡してみると、まず炉の上部に設置されている火棚が目に飛び込んで来た。いや正確に言えば、火棚そのものは良く見えない。なぜなら火棚からは、様々な物がぶら下げられていたからだ。枝豆の束。皮を剥がれた赤ガエルが数匹。干からびた山椒魚

          縄文旋風 第11話 ウルシ村案内

          縄文旋風 第10話 豆と縄文人

          本文 ウルシ村の出口付近で、しばらく前からシロクンヌは御山にかかる朝もやの流れを眺めていた。辺りはまだ薄暗い。高原の村の早朝は、すがすがしい気であふれていた。すると、 「いたー、シロクンヌがいたー!」 元気な声が響き、見るとゴザを持ったハニサが駆けて来る。 「もう、大ムロヤに居なかったから、どっか行っちゃったかと思ったよ。」 「どこにも行かないさ。荷物はちゃんと在っただろう。」 「うん。御山を見てたの?」 「ああ。早朝の御山もいいもんだな。雲が尾根を渡って行く様子は、見てい

          縄文旋風 第10話 豆と縄文人

          縄文旋風 第9話 シロのイエのクンヌ

          磐座(いわくら)の上に、ヌリホツマとハニサは座っていた。 「シロクンヌ、こっちから登れるよ。」 ハニサが指さした方に回ってみると、ちょうど石段のようになっていた。これなら子供でも登れそうだ。シロクンヌが磐座に登ると、ハニサが敷いていた毛皮を横にずらした。そこにシロクンヌもハニサと並んで座った。 「月浴びは、もういいのか?」 月浴びとは、子を宿したい女が行う儀式であった。と言ってもただじっとしているだけだ。満月の夜に、できるだけ薄着をして、場合によっては全裸で月光を浴びるのだ。

          縄文旋風 第9話 シロのイエのクンヌ

          縄文旋風 第8話 大ムロヤ

          本文 「シロクンヌ、今夜はここで休んでくれ。あそこに積んである毛皮は、好きに使ってくれていい。昨日クズハが陰干しをしておったから、触り心地も良いはずだ。ムロヤの空きが1棟ある。明日からはそこが宿だ。 クズハは明日、ハニサと宿の準備を頼む。 良い機会だからムロヤを1棟建てようと思う。ヌリホツマ、地の選びと祓えとをお願いする。 ムマヂカリ、貝の半分とサメの歯の半分、明日、塩の礼にシカ村に届けてくれ。」 テキパキと指示を出すササヒコ。紐の通った月透かしを首から下げて、一層威厳が増

          縄文旋風 第8話 大ムロヤ

          「縄文旋風」副読本  縄文、弥生、そして皇室

          歴史学では、水田稲作の開始をもって弥生時代の始まりとしています。以前は弥生時代の始まりは2300年前となっていましたが、今では3000年前と遡りました。これは、日本での水田稲作の始まりが3000年前だと修正されたためです。 しかし、その時その場で使われていたのは、縄文式の土器でした。ということは土器様式を基準に見れば、縄文時代に水田稲作は始まっていたと言える訳です。 そこで稲作開始基準ではなく、土器様式基準で時代区分を行った場合、つまり縄文土器から弥生土器への移行をもって弥

          「縄文旋風」副読本  縄文、弥生、そして皇室

          縄文旋風 第7話 月透かし

          「おいおいチビ達、もっと離れてくれ。袋が開けられないぞ。こら、覗き込もうとするな。」 興奮気味の子供達が、足にしがみついたりして手に負えない。そうだ、こんな時にはとシロクンヌは閃いた。 「言う事聞けん子は、オオヤマネコが樹の上のジョロ場に咥えていくぞ。」 一瞬キョトンとした子供達が、次の瞬間、大爆笑だ。 「シロクンヌ、ジョロ場ではない。ジョリ場だ。」 ムマヂカリが笑って言う。 「シロクンヌ、ここを使いなよ。」 タマが、臨時の調理台にムシロを掛けた。物を置くには丁度いい。 「す

          縄文旋風 第7話 月透かし

          縄文旋風 第6話 鹿肉のうたげ

          本文 「バタバタ走るんじゃないよ!ホコリが立つだろう。肉が砂まみれになるよ!」 子供達は元気一杯、裸足だ。タマが言ったくらいでは効き目が無い。これから始まる鹿肉の宴がうれしくてしょうがない様子だ。飛び石の河原で、ムマヂカリが大鹿を解体する様子を見ていたのだ。それから数日間のお預けをくらい、これからやっと食べられるのだから無理もない。しかしタマにしてみれば、いろり屋のそばで走り回られては、邪魔でしょうがない。 「言う事聞けん子は、オオヤマネコが樹の上のジョリ場まで咥えて行くぞ

          縄文旋風 第6話 鹿肉のうたげ

          『縄文旋風』副読本  ヒョウタン 竹

          ヒョウタンヒョウタンは、世界最古の栽培植物の一つだと言われています。にがくて食用には適しませんが(無理に食べると中毒症状が出ます)、実が容器使いに最適です。日本ではヒョウタンの野生種は見つかっていませんから、ヒトが栽培したと言っていいと思います。日本最古のヒョウタンは滋賀県の遺跡から出ていて、9600年前の物です。それ以前に、大陸から渡来したのでしょう。 ちなみにヒョウタンの種の寿命は意外に短く、三年たつと発芽しないと言われます。春に播種して秋に実が茶色に色づく一年草なので

          『縄文旋風』副読本  ヒョウタン 竹

          縄文旋風 第5話 ハニサ

          「ならぬぞえ。」 ヌリホツマの、低い声が響き渡った。 ⦅今、おれに言ったのか?心の中まで見透かされてしまったのか?⦆ シロクンヌは、再び石のように固まっていた。                  第4話 了。                     第5話 1 「ならぬと言うておろう。ムマヂカリや、ホムラをなんとかしておくれ。わしのヒザに登ってこようとしておって、言う事を聞かん。」 ホムラとはムマヂカリの相棒の犬である。しっぽを大きく振って、ヌリホツマにじゃれついて

          縄文旋風 第5話 ハニサ

          縄文旋風 第4話 ヌリホツマ

          「シロクンヌ、その袋に縛ってあるの、それはヤスか?」 シロクンヌの大きな背負い袋からは留め紐がいくつも出ていて、いろいろな物が袋の外側に固定されていた。何かの草の束、小振りな石斧、束ねられた縄などだが、長い革の鞘(さや)の付いた棒もあった。 「ハギは魚突き自慢なのよ。」 クマジイに栗実酒を注ぎながらクズハが言った。乾杯の後の談笑中の出来事だ。 「そうか、あの川、たくさん魚がいたが・・・」 「飛び石の川の川筋にはカワウソがいない。おれが狩ったり追っ払ったりしてるからね。」 シロ

          縄文旋風 第4話 ヌリホツマ