ジェフベックとゲイリームーアの意外な共通点
ゲイリームーアはジェフベックに影響されたと言われているが実際はそうでもない。やってきた音楽とそれぞれの音楽的終着点が全く違ったと言いのも大きな理由かも知れない。
実はあのエディヴァンヘイレン以前、最もトリッキーなプレイをしていたのはジェフベックだった。と言ってもエディの様な革命的にトリッキーなプレイをしていたわけではない。せいぜいハーモニクスを演奏に取り入れるなどエディと比べたら遥かに地味なトリッキープレイだった。ゲイリームーアはその簡易的なトリッキーなプレイを自身のプレイを取り入れたギタリストだ。
さて、ジェフベックは生粋のエリクトリックジャズギタリストであるジョンマクラフリンを敬愛しており、あの名作ロックインストロメンタル、ブロウバイブロウがビルボード4位になった後のインタビューでジョンマクラフリンのことを聞かれた時に途中で質問を遮り、ジェフベックはこう答えている。
待ってくれ、俺はジョンマクラフリンの様なプレイはできない、俺は彼らの音楽をみんなに分かりやすい様にプレイしてるだけだ、と。
翻ってゲイリームーア、彼はハードロックに転身して成功する前にジャズロックに挑戦している。ジョンハイズマン率いるコラシアム2だ。
当然あのマイルスデイビスにも重宝されたエリクトリックジャズギタリスト、ジョンマクラフリンのことは意識していただろう。
ある意味謙虚なところのあるジェフベックに対してゲイリームーアは対抗心の強いギタリストである。
しかしながらジョンマクラフリンのプレイは特別である。マイルスデイビスとの仕事を終えた後、彼は自身のバンド、マハビシュヌオーケストラを立ち上げるがその音楽は理論的にも複雑、加えて複雑な変拍子の曲の嵐、そして難易度の高いフレーズを超高速で弾くことを全メンバーに要求するというものであった。
ここまで楽曲が複雑であるといくら腕利のギタリストであってもモノにするのは至難を極めたであろう。加えて一定のポップさを追求する彼にとっては比較的難易度の低いコラシアム2に参加したのは必然であった。自分が思うにゲイリームーアのギタリストとしてのテクニックが完成するのはコラシアム2でプレイした時であろう。
ところで彼の必殺技的なフレーズはご存知だろうか?
低音弦でブリブリ高速ピッキングを披露するのは彼の一つの技だあるが、高音弦を使ったあの必殺技的フレーズはご存知だろうか?彼はそのフレーズを多用していたのでゲイリーファンならピンとくるだろう。
あのフレーズ、実はジョンマクラフリンがよく使うフレーズであった。
あのフレーズは実は一般的なメジャースケールやマイナースケール上の音階ではなくいわゆるディミニッシュスケールという通常はポップスやロックでは使わない音階に基づいたものである。ゲイリームーアはその音楽領域をブルースに移した後はあまりそのフレーズを使わなくなったのだが。
しかしながらジェフベック及びゲイリームーアがいわゆるロックファンが知らないであろうジョンマクラフリンに影響を受けていたというのはなんとも奇遇な話である。
ちなみにジョンマクラフリンとジェフベックは個人的に交流があり、ジェフベックが亡くなった後のトリビュートコンサートにもジョンマクラフリンは出演している。
ジェフベックは生前はライブでジョンマクラフリン率いるマハビシュヌオーケストラのエタニティブリーズ1を度々ライブで演奏している。おそらくオリジナルのテンポの4分の1くらい、ギターのみならず全パートにおいてオリジナルのテンポで弾き切るには恐ろしいほどのテクニックを要する曲である。
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