平成の名勝負、畑山vs坂本その3
そして畑山隆則vs坂本博之戦が始まった。
パワーでは叶わない畑山は元々距離とスピードを活かす戦略を練っていたが、熱くなった畑山は初回坂本との打ち合いを見せる。
しかしコーナーに戻った畑山は冷静になり当初の作戦通り脚とスピードを活かして終始距離を取る作戦に戻る。
その後は坂本の距離に入ってもガードを固くし守り切り、畑山は坂本が打ち終わった後に連打を放つ。
当時テレビで生中継を見ていたが、坂本が畑山にパンチを打つ間は亀のように固く固くガードをし坂本が打ち終わった途端に連打を返していたような印象を覚えた。
こうして坂本のハードなパンチは畑山のがっちりとしたガードに阻まれ、その後は畑山の連打が坂本を襲うという展開になった。
そしてあの伝説となった坂本のダウンシーンが訪れる。ゆっくりとスローモーションのように坂本が倒れるあのシーンである。
畑山ファンも坂本ファンもあのシーンは忘れられないだろう。
坂本は最後まで戦うことを諦めなかった。畑山にダメージを喰らうパンチを何発も受けながらも戦い続けようとした。
でも坂本には立ち続ける体の力が残っていなかった。それがあのダウンの真相だろう。
今の判定基準ならとっくにドクターストップのかかる試合だった。
あのダウンは体が悲鳴をあげていたのにも関わらず闘争心は消えていなかったという証明だと思う。
試合に勝った畑山はもちろんすごかった、しかしダウンした坂本の精神力もすごかった。
そういう試合だった。
もう20年以上も前の試合だが、今でも名勝負として語り継がれるだけの価値のある試合だった。
あの試合のラストシーンは刹那的で、それでいて美しさを感じさせる試合だった。
聞けば今、坂本選手はジムを開いて後身の育成にあたっているという。
あの試合で坂本選手に大きなダメージがなかったことは何よりの救いである。