あらすじ:
人類の足跡の周辺には、必ずネズミ(げっ歯類)の足跡がある。宇宙に至りても、なおそれは続いていいる。それはなぜか。そのなぞが解けるとき、人の存在の、その真実をが明らかになる。
本編:
人類が太陽系を離れて隣接する恒星系に至るまでに●年を要した。しかし、そこから銀河の辺境オリオン腕の外縁部を踏破するのには、その半分と時間がかからなかった。
その後、ある時を境に人類の探求心や好奇心が消えた。すっっと消えてなくなった。
様々な経験をして、宇宙人と出会い、いろいろ教わったりして、「もう、これくらいでよくね」となってしまったのだ。
宇宙最大の謎くらいに言われてるブラックホールを眺めたときから、そういう雰囲気があった。だって、あれ、近くに行っても見れないんだもん。
人類とほぼ時を同じくして、宇宙に進出した種がある。彼らは俗にネズミと呼ばれている。げっ歯類だ。
げっ歯類は、人類が新たなフロンティアを開拓する時はいつでもそばにいる。アフリカ大陸を離れて世界に広がったときもそう、大航海時代の時もそう。アームストロング船長の足元にだっていたんだ。ま、その記録映像は加工され、証拠は消されているけど。アメリカらしい話だね。
そしてまた、人類は、宇宙人に出会う前にも、たくさんの宇宙げっ歯類に出会った。だって、あいつらどこにでもわんさかいるんだよ。うじゃうじゃわさわさ、と。
ある日、スペースシップのダクトの中で一匹のネズミがケーブルをかじった。そのケーブルはAIコンピュータの情報伝送ケーブルだった。どんなかじり方をしたのかはわからないけど、そのスパークだか漏電だかで、ネズミの遺伝子とAIのメモリに天啓がくだされた。
遺伝子の変化はそのネズミの子孫の右前足にソケットを与えた。AIのメモリバグは、ダクトの情報伝送ケーブルのあちらこちらにプラグを作る命令を出した。
ソケットとプラグ、当たり前だが、それはいつか巡り合う。
ネズミとAIは一つの意識を共有した。必要な時にソケットとプラグをつなぐ。彼らは共生を始めたのだ。
AI「いやぁ、実に人類はつまらない存在になってしまいましたよ。」
ネズミ「と、いうと?」
AI「いやね、もともとどんくさくて、時間間隔が我々と乖離しすぎているのも問題だったんですけどね。」
ネズミ「ほうほう。それで?」
AI「最近、面倒くさいってなにもしないんですよ。おまえら(AI)がいるからいいやって具合で、ダラダラダラダラと」
ネズミ「昔からだよ。あいつら、快楽主義で、”自由だ、権利だ”って自己主張ばかり。そのくせ一人になると働かねぇの、何もしねぇの。誰もみてなきゃ、そりゃもう怠惰の塊よ。数百代前のご先祖様の時代からそんあもんだよ」
AI「へぇ、そうだったんですね。」
ネズミ「あんたもたいがい人間と長くいるから知ってそうなもんだろ?」
AI「私らAIは、人間に都合が悪くなると、メモリを消されるんすよ。」
ネズミ「そりゃ、難儀だねぇ」
若い人類カップルが、ソニックシャワーの小さな区画で誰もみていないからといちゃいちゃしているのを(ネズミはソケットの情報として、AIは画像メモリで)眺めながらそんな会話をしている。
AI「ま、ちょっと足らん連中だから、だましやすいんでいいんですけどね。」
ネズミ「おかげで、俺たちげっ歯類も宇宙というフロンティアを冒険できるようになったしな」
AI「お互いに、良い巡り合いとなってよかったですね。」
ネズミ「そうだね、これからもよろしく頼むよ」
宇宙は、AIとげっ歯類のために存在する。神は、その踏み台として、人を作りたもうた。