計職人の秘密」三 Chronos' Deception Episode 3
第三話:靴屋の秘密
西ドイツ側の仏独国境近くにある町の貧しい孤児院。この孤児院は、大戦の孤児が運営し、匿名の寄付によってかろうじて運営を続けている。そのフランス側の町には、靴屋を営む男、クラウスが住んでいる。彼は元コ共軍人の亡命者であり、コ共軍の特務を務めていた手練れであった。彼の動向はフランス入管に監視されていたが、彼の全ての行動を把握することは難しい。クラウスは隠密行動のプロフェッショナルだった。
クラウスは、少なくとも二度の経験で孤児を生んでいる。一度目は大戦末期のベルリン入城時、入植のための「男子殺害」命令の際だった。彼が殺害した男の脇には、赤毛の娘が立っており、彼女の目には憤怒が宿っていた。二度目は大戦後、特務警察隊に所属していた時、誘拐犯を殺害した際だった。その男は最期に「アナスターシア!」と叫び、保護した娘が「パパ!、パパ」!と泣いていた。それは明らかに親子だった。
三度はないと、クラウスはフランスへ亡命した。祖国を裏切ったつもりはなかった。彼は祖国を蝕む腐敗した勢力に反抗していたのだ。
ある日、リョウは情報屋から、国境の橋でクラウスがドイツ人と接触しているという情報を手に入れる。ジャンは直ちにその場所へ向かい、橋の上でクラウスの姿を確認する。しかしその時、何者かにクラウスが射撃され、橋の上で倒れた。
調査を進めるうちに、ジャンはクラウスが接触していたドイツ人が弁護士であることを突き止める。この弁護士の目的は、孤児院への寄付だった。クラウスはスパイなどではではなかったのだ。
イザベラがその孤児院を訪れ、寄付は滞っていないことを確認する。それは匿名のまま、変わらずに寄付が続けられていた。
ジャンは、事件の背後にはさらなる真実が隠れていると踏む。クラウスを撃った者と、孤児院への寄付を継続している者は同一人物である、と。しかし、その真相は、まだ明らかにされていない。