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海の塩気が空気に混ざり、エオランデの銀色の髪を軽くなびかせた。彼女は船から降り立ち、異国の港町の石畳の道を歩いた。その手には、ナイフのからくりから取り出した古い便箋が握られていた。便箋には「友よ、生きているうちに尋ねてくれ」という言葉が書かれていた。

「わざわざ、会いにきてあがたわよ。」エオランデは便箋をさらに強く握る。

突然、背負い袋の上に一羽のカラスがとまった。その目は知恵に満ち、黒い羽は光に反射しているようだった。

「わざわざ来ていただかなくても結構。」カラスが言った。

エオランデは、ポケットからビスケットを一枚取り出した。カラスはそのビスケットに目を輝かせた。

「前言撤回。これはこれはようこそ、エオランデ様。」

「よくぞ、訓練したものね。」エオランデは微笑みながらビスケットをカラスに渡した。

「まぁな。しかし、エルフというものは、我が強くて困る。」カラスはビスケットをくちばしでつつきながら、言葉を続けた。

エオランデはその言葉に心の中で頷いた。彼女自身、長い年月を生き、多くの友を失い、多くの敵を作ってきた。その強い意志とプライドが、時には彼女自身を孤独にしてしまうこともあった。

灯台が近づいてきた。その灯火は遠くの海に光を投げかけていた。エオランデは灯台の扉を開け、中に足を踏み入れた。そして、その瞬間、灯台の灯りが一層明るく輝き始めた。

「友よ、私は来た。」エオランデは叫んだ。

「おい!4、5日足止めしとけと言ったろ!」億からおそらく灯台守のものと思しき声がした。

「エルフは我が強くて困ると言ってたわ。」

「おまえさんほどでは無い。」エルフの男が顔をのぞかせて言った。