Starvoyager's Quest: The Stellar Brain's Journey 005
"The Griffencian Negotiator"
名前: ザンダー・グリフィン (Xander Griffin)
宇宙人種: グリフェンシアン (Griffencian)
特徴: グリフェンシアンは背の高い種族で、彼らは知識と商才に優れ、営業の達人として広く知られています。交渉においては巧みな話術と魅力的な笑顔を駆使し、相手の心をつかむことが得意です。
引用:「宇宙人名鑑」著:ステラー・ブレイン
エルダーと12人のアプロナータ達が、この星に転送上陸した地点には、何もない草原が広がっていた。遠くに火山群が見え、複数の火口からもうもうと煙を吐いている。
「ちょっと詳しくあたりをみたいんだけど」
エルダーがアプロナータに声をかけるが、護衛指示を受けているアプロナータ達はかたくなにその守備体系を崩さない。がっちりとスクラムを組んだまま微動だにしない。
「事何もないよ。大丈夫だから・・・護衛中断」
するとアプロナータ達は、陣形を崩しハイタッチを始めた。
「まるで暗殺者集団から俺を守り切った!みたいな、そういうのいらないから」
エルダーはそう言ってはみたが、アプロナータ達が気にする様子はなく、ハイタッチは続いていた。
「で、あたいはこれからどうするの。調査如きにこの大所帯いらないと思うが」
「3人ばかり連れていきたいって何度もお願いしただろー!」
「で、あたいはこれからどうするの」
「な、なんだよ、言い訳も反論もしないのかよ。ったく」
「イライラは体によくないぞ」
エルダーは、アプロナータと会話するのはやめようとちょっとだけ決意した。
すると上空から声が聞こえた。
「どうも、上から失礼します。私、ザンダー・グリフィン (Xander Griffin)と申します。宇宙賃貸不動産の営業をしておりまして」
上を見上げると小型のドローンに逆さまにぶら下がった一人の営業マンがエルダーたちに、満面の笑みを向けている。
「実はこの星ダイナミカですが、以前の借主様の母星が急激な人口減少に見舞われまして、お里帰りをするということで、最近空き惑星になったばかりなんですよ。この通り、気候もよくエネルギーも豊富、さらに主星である恒星も安定中期にあたり、これからも数十世代にわたってご活用いただけるものと思われます。いかがでしょう。お連れ様の数を見ますに、これから多くのご子孫様を残されるご様子。この星ならばご検討いただくにふさわしいものと思われます」
エルダーは少し考えて、話に乗ることにした。
「なるほど。ほかにおすすめの物件はありますか?ぜひほかも検討したんだけど」
ザンダーは、ドローンの足かせをはずし、ドサッと5mほど上空から転げ落ちた。
「失礼、無様なところをお見せして申し訳ございません。降り方がよくわからないんです。これでも手前どもの種族は、飛行能力を持った生物の子孫なんですよ。今は全く飛べませんが」
と尾の先についた小さな羽根を見せた。4枚くらいの小さな羽毛が過去の栄光をわずかにとどめている。ザンダーが立ち上がるとそれは細身だが3.5mほどの長身であった。
「おすすめですか。いや、このあたりにはこのダイナミカ以外居住適正の惑星はありません。ここで決めなければまた数十光年、こんな出物に出会うことはありませんよ」
「そうですか。こう言っちゃなんだけど合い見積もりで、他とも比較したいんだよね。あんまり持ち合わせがなくて」
「でしたら、このダイナミカ、今がチャンスですよ。通常このクラスの惑星ですと100,000UC(78ニバーサル・クレジット)は下りません。ですが、今この場で即決していただけるのであれば、初年から二百年の間は40,000UCで結構でございます。礼金敷金もいただきません」
「そんなに、まけてくれるの」
「ええ、もちろんでございます。正直申しますと、このダイナミカ、急な契約解除でして、担当の私としましては、ここにかかりきりというわけにもいかないのです」
「なるほどね。じゃぁ、ここ数日試しに貸していただけないだろうか。その数日分は支払うから」
「そうですか、ぜひお試しください。きっとお気に召していただけるものと思います。では私別件で急ぎの仕事がありますので、数日したら戻って参ります。では、スターキーパーへの期限付き登録をしておきますので、この照明鍵をお持ちください。照明鍵を紛失しますと、スターキーパーの大艦隊に討伐されます事おわすれなく。では、失礼
エルダーは、ダイナミカの借星権を手に入れた。これでエネルギーの使用は、適正な範囲であれば自由に行える。コスモフライヤー一機と13人分の生活資材数か月分くらいなら適性の範囲だといえる。
「エネルギーと生活資材の確保と積み込みをする。各自適切な行動をとるように」
エルダーがそう指示をすると、アプロナータ達はハイタッチを繰り返した後、エルダーを置いて散り散りに歩き出した。
「あ、2時間ごとの定期報告と、行動制限になる前にみんなここへ帰って来いよー!」
「あたぼーよ!」
アプロナータ達は、後ろ手にエルダーに手を振り、そこから駆け出して行ってしまった。
「果たして俺は何をすべきなのだろうか」
エルダーは草原に一人佇んでいる。そこにはただ風が吹いていた。