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アリスと七色の飛行機:ショートストーリー「空へ」

「アリスと七色の飛行機」

アリスは「綿アメ雲の上あたり」と呼ばれる不思議な世界に住んでいた。この世界では、すべての動物に翼があった。しかし、その翼は飛ぶための物理的性能を持っているようには見えなかった。翼は形も大きさもバラバラで、一見すると滑稽なものばかりだった。

アリスは、この翼が持つ真の意味を知りたくなった。そして、何かがわかるかもしれないという希望を胸に、飛行機を作り始めた。木材、布、ワイヤー、そして何よりも多くの想像力で、アリスは少しずつ飛行機を形にしていった。

「じゃましないで!」アリスが激しく叫ぶと、物珍しさに集まってきた住民たちは一瞬驚いたが、すぐにその場を明るく盛り上げた。彼らはアリスの飛行機作りを楽しみながら、自分たちの滑稽な翼を広げては笑い合っていた。

ついに、飛行機が完成した。しかし、その飛行機は予想外の形になってしまった。それは「綿アメ雲」のように、七色のふわふわした何かに変わっていた。アリスは驚きと失望で目を丸くしたが、その瞬間、飛行機はゆっくりと浮かび上がり、空に舞い上がった。

住民たちは歓声を上げ、アリスもその場で涙を流した。飛行機は滑稽な形であったが、それがこの世界に合っていたのだ。アリスは、翼が滑稽であることの意味を理解した。それは、この世界が持つ独自の美しさと自由を象徴していたのだ。

アリスはその後も飛行機を飛ばし続けた。そして、住民たちも自分たちの翼で空を飛ぶことに恐れを感じなくなった。滑稽な翼でも、その翼で飛べば、何かが見えてくる。それが「綿アメ雲の上あたり」の住民たち、そしてアリスが学んだ大切な教訓であった。

そして、アリスは空を飛ぶことで、自分自身とこの世界をもっと深く理解することができた。しかし、そのすべては、一枚の滑稽な翼と、一台の七色の飛行機から始まったのである。