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「10 -第ニ部-」 19話

【駐在員たち】

ソラがアヤに着いた頃。
電車でアヤへ向かおうとするルリとアサギはなぜかロウに止められていた。

「ロウさん!なんで止めるんですか!役には立たないと思いますが我々もアヤに行きたいんです!」
「ソラを1人行かせたくないんです!止めないでください!」
「いや、だから電車より早い手段がもうすぐ着くから」

やいやい言う2人をなんとか止めていると、玄関から「すみませ〜ん」という声がした。

「やっと着いたか」
「誰だ?こんな時に」

やや殺気だったルリが玄関を開けると、ジンとアルアが立っていた。

「どうも。ロウさんからの依頼で来ました」
「目的地はアヤでいいんだな」

あっけにとられるルリの横からロウが顔を出す。

「ああ。来てくれてありがとう。この2人をアヤまで頼むよ」

ロウはルリとアサギを指差す。ジンとアルアは「了解」と言うと満面の笑みを浮かべてこう言った。

「「で、どっちがどっちに運んでもらいたい?」」


「隊長!遅くなってすみません!」

ソラは指定された待機場所に着いた。トキとクレナがいる。

「うん。大丈夫。ちょうどみんな準備を終えたところだから」

戦闘が始まろうと言うのにトキは相変わらずのんびりしている。

「作戦通り工場地帯から攻めてくるみたいですね」
「シキさんの情報操作はさすがだねぇ。敵は自分達が罠にかけられてるなんてちっとも気づいてないよ」

東の倉庫街の向こうには工場が立ち並ぶ場所がある。この時間は働く人は皆帰っているし、入り組んでいるうえに民家からも離れているので今回の戦闘場所に選ばれた。
ちなみにソラの両親はここで働く人向けに食堂を営んでいる。

「こちらイエロー。敵さん動きだしました」

カナリの声が聞こえる。彼はシキ譲りの諜報力で敵の動きを仲間に伝える役割だ。

「数は50っすね。木材加工の工場裏から進行してきてます」
「ピンク、了解。うむ。50か。とりあえずヒワ君にある程度減らしてもらおうかな。ピンクからグリーンへ。トラップの具合はどうかな?」
「こちらグリーン。いつでも行けますよ」
「ではイエロー。タイミングの指示をお願いします」
「イエロー、了解っす」

上がってくる情報にトキが指示を出していく。それを見ながら、ソラはずっと疑問に思っていたことをクレナに聞いた。

「あのコードネーム、必要ですかね?」
「まあ、雰囲気がでるからいいんじゃないかな」

トキは意外と形から入るタイプなのだろうか。結局新たな疑問ができただけだった。


「敵さん第一ポイント通過。ヒワさん、お願いします」
「は〜い」

ヒワがコントローラーのボタンを押すと、先行していた敵の頭上から網が降ってきた。敵を捕えるとそのままスライムのような液体まで落ちてくる。ネバネバとした液体と網で動きを封じられ、先に進むことができない。

「うちの子でも考えつくようなトラップにかかるなんて、人って単純よね〜」
「いや、お子さんに何の英才教育してんですか。あ、敵さん進路を変えて焼却場のほうに行きましたね」
「予想通りね。イエロー。第2ポイントまで来たら教えてちょうだい」
「イエロー、了解っす」

その後も地面から突然出てくる拘束具に足を捕われたり、飛んでくる大量の桶に当たって気絶したり。微妙に戦意を削がれるトラップが敵を襲っていく。結果、敵の人数は半分まで減っていた。

「そろそろですね。レッド、ブルー、出番ですよ」
「レッド、了解」
「ブルー、了解です」

やっぱりコードネームの必要性がわからないまま、ソラは敵を迎え撃つために走った。


「クソ!変な仕掛けしやがって!ここの隊員は腰抜けばっかか!」
「おやおや。ならばお望み通り対面でお相手しよう」

悪態をつく敵の前にクレナが立ち塞がる。

「俺はトラップも何も使わないよ。さあ、かかってきなよ」

クレナの挑発に敵がのる。これまでのストレスをぶつけるかのように突進してくる敵が、クレナに掴みかかった瞬間。

「へ?」

宙に浮いて地面に叩きつけられた。

「なんだ。口ほどにもない。ほら、どんどんかかっておいで。これじゃうちの子達の相手をしてる方がよっぽど運動になるよ」

次々襲いかかってくる敵をクレナはどんどん地面に叩きつける。

『クレナさん、接近戦はおそろしく強いもんな。俺もよく投げ飛ばされたなぁ』

感心してクレナを見ていたソラだが、自分の方にも敵が来たので慌てて対処する。背の高さを活かして攻撃されるより早く相手を掴み投げ飛ばしていく。

「お、ソラも強くなったなぁ」
「はい。クレナさんのおかげです」

楽しそうに敵を薙ぎ倒していく2人に、冷静になった敵が銃を手に取る。
だが、狙いを定めようとした手を何かが撃ち抜いた。

「は?……あ、い、いてぇぇぇ」
「拳には拳を。銃には銃を。飛び道具だすなら容赦なく撃ち抜いてくわよ」

高台でリンドが狙撃銃を構えている。その目は獲物を逃さない鷹の目をしていた。

「さすがリンドさん!」
「よ〜し。残り少し。頑張ろうか」

その後も3人で連携して敵をどんどん倒していった。


「あとは敵の親玉だけだけど」

下っ端の敵は全て拘束したが、敵のリーダーか見当たらない。全員で探しているとリンドから発見の報告が入った。

「いた!繊維工場の裏!でもここからじゃ銃が届かない!」

通信を聞いてソラが駆け出す。

『繊維工場なら俺が一番近い。なんとしてもリーダーを捕まえて教会との繋がりを吐かせないと。全てが終わらない』

町を知り尽くしたソラは細い裏道を抜け、なんとか敵が見える所まで出てきた。
逃げようとする姿に銃を構える。

『右肩。上がらないように』

リンドに教えられた通りに敵を狙う。発射された弾は敵の足を貫通し、敵は転んで痛みに苦しんでいる。
ソラは駆け寄り手錠をかけた。

「こちら……ブルー………敵のリーダー………確保しました」

通信機ごしに歓喜の声が湧き上がる。

「ソラ!よくやった!」
「お手柄ね!」
「なんだよ!おいしいトコ持ってって!」
「いい一撃だったわよ!」

みんなの声にやっと嬉しさが込み上げてくる。

「ソラ君。お見事でした。これにて作戦は終了です。みなさん、大成功ですよ」

もう一度歓喜の声があがり、町は平和を取り戻した。

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