オタクの独り言・私立恵比寿中学編
私立恵比寿中学を知っていますか?
「聞いたことある」
「エビ中ね」
「仮契約のシンデレラだけ知ってる」
「声がすごい子いるグループ」
「鬼連チャンに出てた子がいるグループ」
私立恵比寿中学(=エビ中)に詳しくない人だけを集めて聞いた時、予想される返答はだいたいこの辺りかなと思っています。合ってますか?
仮契約のシンデレラのかわりに放課後ゲタ箱ロッケンロールMXが挙げられるかもしれません。
近年はアイドルもハロプロや48、坂道など国内産のアイドル、kpop、kpop寄りの国内ドル、地下アイドル、そしてアイドル活動を兼業する声優……と幅も増えてきました。純アイドルからアイドルっぽい見た目したアーティスト、アイドルかと思いきやアイドルじゃなかったパターン。様々。
それでも、だからこそ、私はエビ中の話をしたい。もっとエビ中を広めたい。知ってほしい。こんなにも牧歌的で、多幸感溢れるグループが存在していることを。これから書き連ねる長い長い文章それ自体は暇つぶしにでもなればと思って書いています。願わくば、私立恵比寿中学に触れる人間が今よりもっと増えればいいなと思いながら。
令和6年、今だからこそ私立恵比寿中学の話をします。
私立恵比寿中学・爆誕
私立恵比寿中学―エビ中はその名の通り私立中学のコンセプトにより立ち上げられたグループでした。スタンダード衣装は制服を着用し、加入順に「出席番号」が割り振られています。自己紹介で名乗る時もこの番号を添えています。「永遠に中学生」と名乗り、結成時のキャッチコピーは『キレのないダンスと不安定な歌唱力』。ライブは通称『学芸会』。ファンの名称は「ファミリー」。完全におこちゃまです。
早速脱線しますが個人的に好きな話があって、エビ中が結成されたほぼ同時期に「さくら学院」というグループがありました。同じく学校コンセプトで制服着用ですがさくら学院のほうがお淑やか、清楚なイメージがあり対して自由奔放で好き放題、提供楽曲も大抵トンチキだったエビ中は「私立から連想されるお嬢様感がない」「さくら学院のほうが私立っぽい」など言われていました。さくら学院は年齢で明確に卒業制度を取っていましたが永遠に中学生なエビ中はいくつ歳をとっても中学5年、6年、7年と学年があがっていく。つまり私立恵比寿中学とは当初からそういう、なんとなく「雑多な」グループだったのです。
・初期〜
2009年、スターダスト所属のももクロの妹分として私立恵比寿中学(エビ中)が誕生しました。
(この頃は私もまだ追っていなく、存在も知らなかったのでネットで調べた情報を元にしています。だいたいの概要を述べています。間違ってたらごめんなさい。)
ももクロの妹分として結成されましたがももクロは2008年に結成、3年後の2011年に『Z』をつけて改名。エビ中ができたのは、まだももクロがメジャーデビューをする前でした。
結成当初の人数は5人。今でも残っているのはそのうちの1人だけ。後述する真山りか、ただ1人。その後スタダ内で何度かメンバーの加入(転入)と脱退(転校)を繰り返し、メジャーデビュー直前には9人になりました。エビ中は当面この9人で活動していくことになります。
2011年8月に初のワンマンライブを果たしましたが、まだももクロもメジャーデビューして間もない頃で、ステージ上ではそれなりにメンバー間に格差があったとか。歌が上手い子にはマイクが、そうでない子にはおもちゃのマイクが渡された、とか……。
ももクロもまだハネる前なので事務所は試行錯誤の時代だったのではと思います。
しばらく9人で活動していくエビ中はまず、「仮契約のシンデレラ」でメジャーデビューを果たしました。なんだかんだ1番知名度が高い曲なんじゃないかな。そして「放課後ゲタ箱ロッケンロールMX」。リリースされる曲はとにかく癖があり、時にはキョンシーになったり、時には運動会をしたり。のんびり楽しく中学生活を送っていました。
伝説のアイドル祭・ゆび祭り
アイドル好きを公言する指原莉乃が呼び掛けて開催されたアイドル出演イベント、「ゆび祭り」。乃木坂やアイドリング!!!、Buono!など事務所を問わない多数のアイドルが出演。このイベントにエビ中も呼ばれました。ももクロと一緒に。この時にエビ中はひときわ異彩を放つ、まさしく「ロック」な衣装で会場の注目を集めたのです。
ダイジェスト版がありました。
ゆび祭りがエビ中の入り口だったという人の話をよく聞きます。
かく言う私もイベント開催から数年後、この映像でエビ中を知りました。
初見の印象は「なんだこのグループ?」
まず登場時の奇抜も奇抜な大浮きした衣装。周りは王道なのに……。本当にアイドル?大丈夫なのか?この時点でイロモノ感はとっくに100%。曲が始まった途端よく響いて通る「イエーーーーーイ!!」の応酬。おっ、歌が上手いのか?と思ったのも束の間、ヘドバンとエアギターがそこかしこで起きている。異様な光景。
0:33~からシャウトを入れる赤髪の少女を見ましたか?
出席番号6番・廣田あいか。彼女は普段の喋りと歌唱時とのギャップが強く、エビ中の入り口ともいえる存在でした。ギャップを持つ彼女からエビ中を知る、このパターンが一番多かったと思います。
廣田あいかは電車好きの、いわゆる『鉄オタ』の特性を生かしてこの数か月後には「タモリ俱楽部」にも出演することになります。
初期のエビ中は妙に不遇というかアンラッキーというか、野外ライブを行えば天候は雨。恋愛の楽曲は大抵が片想い。
余談ですが、ももクロの妹分として結成されたにもかかわらず(?)、平均身長がももクロより高い。そして、全体的な声のキーはももクロより低い。すべてがチグハグでしたが、それが魅力でした。
(ももクロとエビ中が一緒に歌っている貴重な映像。)
序盤1分以内に各グループがユニゾンしているので興味のある方は是非。
(0:45~ももクロ、0:47~エビ中、0:54~チームしゃちほこ。3グループの中で一番キーが低い)
ゆび祭りで知名度を上げたエビ中はその後もドラマやポケモンとタイアップ、野外ライブ、ワンマンライブ等活躍の幅を広げます。
気志團万博で雨女の真骨頂発揮
2013年は気志團万博に出演したエビ中。
この日のライブで伝説を作りました。
降りしきる豪雨の中、セットした髪が濡れるのもメイクが落ちるのも気にせず9人のメンバーが颯爽と登場しました。
開演前まで「ももクロのバーター」だの「オマケ出演」だの上がっていた声を吹き飛ばしてしまうようなパフォーマンスはまさに圧巻。この瞬間彼女たちの魂は震えていた。
『雨よ降れ風よ吹け、私たちは負けない』―歌詞がこの日の天候と絶妙にリンクして「エビ中=雨」の図式がファンの中で完成しました。自由奔放ながらも突き通してきた一本の芯を、ステージ上で堂々と大衆の目に晒したそのパフォーマンスは必見です。
順調に活動してきたエビ中ですが、2013年に一つ目の節目を迎えます。
メジャーデビュー時からずっと活動してきたメンバー3人が転校を発表しました。エビ中からまさかメンバーが抜けるなんて……と、当時のファンは困惑し、多分なかなか受け入れられるものではなかった。私もそうでした。
2014年4月、日本武道館で開催された「私立恵比寿中学合同出発式〜今、君がここにいる〜」。これをもって長らく続いたエビ中9人の時代は終わりました。
・中期~
転校した3人の代わりに、出席番号11番小林歌穂と12番中山莉子・当初リアル中学生だった通称「かほりこ」の2人が加入しました。計8人。ここからエビ中は新章を迎えます。
もともと提供曲に癖がありましたが、この頃からさらに加速。
Mステに出たい!だけしか歌わない、ある意味伝説の楽曲が誕生します。その名も「金八DANCE MUSIC」
紅白の前にまずMステに出演したかったエビ中。インタビューでもことあるごとにMステ出演の野望を語っていました。
ぽんぽんぽんぽんギロッポン!
フライデーエイト ギロッポン!
?
金八金八金八金八
金曜八時はテレビに出たいの六本木
??
「なーんか小腹すいたなぁ」
「そんな時には、コレ!」
「わぁ、エビ中ソーセージ!いっただきまーす!」
???
「なんだこの曲?」→「なんだこの曲…」→「なんだこの曲?」
(曲を初見で聞いた時の感想。本当にずっと「なんだこの曲は」と思っていた。今でもそう)
曲中に出てくる「ゴールデンエイト」はMステの放送時間である金曜8時と、当時のメンバー数8人を掛けている粋な仕掛けでもあり。
トンチキの集大成─大トンチキの大変化球曲で勝負に出たエビ中はそのインパクトでめでたく念願のMステ出演を果たします。おめでたい!!
1度の出演きりでMステとはこれきり……ではなく、癖ありまくりの曲と癖のある喋り方をするメンバーによりお茶の間の話題を搔っ攫ったエビ中はその後も2回、計3回Mステに出演しました。本当におめでたい……。
Aステ Bステ Cステ Dステ
Eステ Fステ Gステ Hステ
Iステ Jステ Kステ Lステ
Mステーーーーーーーー!!!!!
渾身のMステ。
夢だったMステ出演もできたエビ中は順調に、けれど緩やかに活動を続けていて、「これからはきっと8人で苦楽を共にするんだろう」と、ファンの誰もがそう思っていました。
続くエビ中への試練
2017年2月、突然の訃報でした。
初期から在籍していた松野莉奈が致死性不整脈により永眠しました。
わずか18歳の若さでした。
初期からずっと一緒に活動してきたメンバーの死。
これでエビ中は7人になりました。(松野莉奈についてはまた別のところで触れられたらいいな、と思います)
たくさんの思い出を胸に、それでもエビ中は走り続けます。
松野莉奈急死後のアルバムに収録されている、彼女を歌った曲の「なないろ」はTHE FIRST TAKEでも披露されました。
メンバーカラーの青色と9番は今でも彼女のために残されています。
そしてまたまた、エビ中にひとつの節目が訪れます。
入口と言っても過言ではなった出席番号6番・廣田あいかが、2018年に転校をしました。
これもまたファンにとっては衝撃。窓口みたいな子が辞めてしまうのですから。でも、そんな私たちの心配を取り払ってくれたのはエビ中本人たち。2019年3月にリリースされたアルバムの中に、とても好きな曲があります。
ヘイシスター ヘイブラザー 聞こえているか
心配はいらないよ 任しといてよ
ここにいるときの私は いつもよりちょっぴり強いんだよ
ヘイシスター ヘイブラザー 届いているか
後悔はしないよ させないよ
今日の私の目を覚えていて
静かに燃える瞳の奥の美しき命
アルバム『MUSiC』から「Famliy Complex」の一節。
曲名の『Family』は紛れもなくファンの総称・ファミリーを指しています。
心配はいらないよ、任せておいて。後悔はさせない。本人たちの口からこう言ってもらえたことが、どれほど救いになったか。不思議なことにそれほど動揺もしませんでした。むしろ安心感?曲中にはメンバーの名前をなぞらえた歌詞も入っていて、決意表明のようなものだと受け取っています。
ああ、ついて行ってもいいんだ。残っているメンバーを信じていないわけでは決してないけれど、心のどこかにあった不安や焦燥感は柔らかい砂のように、緩やかに均された。
私立恵比寿中学は大丈夫。この瞬間、そう確信を持てたのです。
3度目の旋風・「自由へ道連れ」
正直私はこの話をずっとしたかった。この話をするためにnoteを書いた……
は言い過ぎだけど、エビ中―私立恵比寿中学を語るうえでこれだけは外せない、そんな1曲。
ご存知椎名林檎の楽曲を、トリビュートアルバムにてエビ中ちゃんが参加して歌唱したのです。
椎名林檎の曲を、エビ中が……?
今回ばかりは、というより今度は椎名林檎氏のファンがターゲットにも含まれ、今までファミリーだけで保っていた─ファミリーだけが知っていたエビ中を世間に確実に知らしめる、そんな絶好の、ある種の賭けに出たような発表でした。ここでコケるわけにはいきません。ここまでエビ中に付いてきたファミリーは私立恵比寿中学の実力の成長を肌で感じてきましたが、世間一般はそうではない。なぜならMX、ギロッポン、ココナッツサブレ……
スターダストのイロモノの代名詞ですらあったのだから。
今にして思えば、その「期待値の低さ」が逆に、世間の感覚に作用したのだと思います。
この動画だけでもぜひ一度、聞いてください!!!!
「私立恵比寿中学?金八の?」「ももクロの妹分だっけ?」「エビ中が椎名林檎をカバーできるわけ?」
『中学』なんて名前のついた未成年のアイドルが椎名林檎をカバーできるなんて誰が思ったか。ましてや今みたいに、新しい学校のリーダーズのような斬新な切り口のアイドルも少なかった時代に。
それでもやっぱり、やってくれました。方々から聞こえる不安の声と懐疑の目を取っ払って、これでもかと実力で答えを出してくれた!生歌で、心底楽しそうにステージ上を駆け回わる姿でアンサーを出したのです。
「私立恵比寿中学って実はスゴイんじゃない?」と、ようやく世間に気づいてもらえた転機の瞬間だったと、私は勝手ながら思っています。
この動画を見てもらえたならもうそれでいい。きっと私立恵比寿中学に抱いていた考え方が、ガラッと変わるはず。
最近のエビ中
エビ中といえばギロッポンだったり放課後下駄箱だったり、そもそも所属がスターダストだし……というような具合ですが、実は最近のエビ中はやや方向転換をしているのか、近年の動向に寄せています。どういうことか?
単に私がすごく好きな曲、ではあるのですがそれまでのエビ中とは方向を一変し、ここにきて流行りに寄せてきたらしい。それでいてこの完成度。
オタクの贔屓目はあるんでしょうが、ここまでどんなコンセプトにも柔軟に応じることができる変幻自在のアイドルは他にいないんじゃないか?そう思わせてくれます。彼女たちは。
メンバーの卒業と加入を繰り返してここまで来た、私立恵比寿中学。まだまだ進化を続けて留まることなど知らないエビ中。
少しでも多くの、一人でも多くのファミリーが増えますように。
そう思いながら、この記事の幕は閉じようと思います。
「以上、私立恵比寿中学でした!!!」