作品供養 その四
サラにとって親父から受け継いだ屋敷は悩みの種であった。十三の娘が一人で住むにはあまりにも膨大で、なおかつ何かとモノが多い。生前は自らを発明家と自称していた親父が数多くの機械を屋敷に置いていたのだ。説明書を作る前に。
なので、メンテナンスはおろかまともに使う事すら出来ない機械群を前に彼女は頭を悩ませていた。何が起きるのかもまるで分からないので、触る事すらままならない。
「さぁーて……どうしよっかなぁ……」
恐る恐る近くにあったデジタル時計を触る。パネルには白と緑で構成されたシンプルな文字盤は点滅を繰り返している。頂点には何やらボタンが外付けされていた。
「何かしらね……」
ボタンを押す。文字盤が変化した。クラッシックが唐突に流れた。サラは思わず手を放す。
画面は文字盤から違うモノに変化していた。カートゥーン調のアニメーションだ。少女をデフォルメしたキャラクターが驚いて時計を落としている。その後、少女の右隣でリボンをまとった白猫が鳴く。
にゃあん、とサラの隣で白猫が鳴いた。父の飼い猫だ。首元にはリボンが巻き付いている。
「まぁ、これまた妙な……」
画面にはあごに手をやりながら時計を凝視する少女がいる。
サラはあごに手をやっていた。サラが手を放すと画面の少女も手を放した。
「奇妙ね……」
画面にはセリフが映っている。『weird(奇妙)』と。
この時計が自分と同じ動きをするのに夢中になっていた。この壊れかけの時計が運命を予言するとは何とも奇妙な話ではないかと。
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