小説「浮遊の夏」⑥ 住野アマラ
中学生の時に広島への原爆投下をテーマにした芝居を上演した事があった。
その時にかなり資料を見たり読んだりした。
多感な時期だったし丸木美術館の原爆の図や峠三吉の詩がショックだった。
他人より過敏なのかも知れないが放射能と聞くと恐怖を感じてしまう。
何か大事なものを失ったような不安。
何かを取り逃がしているような不安。
私だけ間違った方向に進んでいるような不安。
知らず知らずに何かを傷つけているんじゃないかという不安。
不安は不安を呼ぶ。
水の中を泳ぎながらいつも腕や足を動かしていないと沈んでしまいそうな不安。
ワタシ シズミソウデス。
ワタシ オボレソウデス。
力を抜いてリラックスすればふわっと浮くよと言われても力が抜けない。時には力を抜き、水の上に浮かんでみたい。
たまにそんな感覚を垣間見る瞬間もある。
今日のお墓参りでそんな気がした。
いい時間だった…。
じわじわと額に汗が出てきた。
冷え性に良いと効能に書いてある。
汗をかくと幾分不安な感じは薄らいだ。
いかなることにも解決法はあると、少し前向きな気持ちになった。
〈続く〉