改葬しますか？

墓じまいや改葬がブームである。

墓じまいは今あるお墓を完全に解体し中にあった遺骨を合祀などの形で埋葬し、元あったお墓の区画を整地し所有者であるお寺や霊園等に返還すること。

改葬はお墓の中にあった一部または全部のお骨を取り出して別のお寺や霊園等に埋葬すること、と一般的に定義されている。

地方にあるお墓を墓じまいし、自分の住む都道府県に持ってきて改葬というのはよく見る。遠い田舎にあるお墓のケースが多い。先祖の霊を全て改葬となると10霊位単位となることもある。

改葬には、改葬元が首都圏内であれば、お墓から遺骨を取り出して移送するのは業者に頼むとあまりかからないことが多い。10万円もしない。ただし、そのお墓の現状回復費、墓石の処分費、そのお寺や霊園に払う離檀料、閉眼供養のお布施などがかかるほか、もし一部のお骨を合祀したりする場合は合祀の費用もかかる。以前雑誌で見たが、こうしたお寺や霊園等に支払う費用が100万円を超えるようなケースもあるというから、よく確認してから方針を決めたほうがよい。

手続きは、改葬元が遠いととても煩雑である。改葬元のお寺や霊園等から埋葬許可証を発行してもらい、改葬先のお寺や霊園等からは受入証明書（使用許可証や契約書の場合も）を発行してもらい、両方の書類を持って改葬元のお寺や霊園等を所管する地方自治体で改葬許可証を申請する（郵送の対応も可の自治体が多い）。すると改葬許可証が後日発行され、これをもって初めて遺骨の引き取りと、改葬先での納骨ができる。

遺族が改葬元に行くのも大変なので、墓地の販売会社で代行サービスを手掛けているところも多い。手数料は出張先の地域に応じて数万円〜十数万円ほどはかかるが、墓石の解体などはそもそも個人でできず誰かに委託するため、役所への書類提出なども含めすべて丸ごと代行してしまうのが1番スムーズだと思う。お寺や霊園等にいくらくらい払うのが妥当な水準かというのも、代行業者である程度把握していることもあり、聞いてみるとよいかもしれない。

このように、墓じまいや改葬は費用も時間も労力もかかるため、親族でよく話し合って進めてください、と伝えている。

個人的には、たくさんのお骨をわざわざ田舎から持ってこなくてもいいんじゃないか、と思っている。お骨をお墓から掘り出し、遠いところで新たに埋葬するのがなんとなく私には相容れなくて、とくに分骨となると離れ離れになる感じがしてしまう。静かに眠っているところを起こすイメージがある。

お墓の墓守がいなくなって朽ちてしまっても、それはいろいろな理由があり仕方のないことだと私は思っていて、もし気になるのであれば検討すればよく、絶対に改葬したほうがいいとか墓じまいしなければいけないというわけではない。また、もしそういう話が、本家といった特定の家や人に降りかかっているとすると気の毒な話で、よくよく話し合いをするか、話し合いが難しければ個別にできる範囲で対応するしかない。

こうした墓じまいや改葬のいろいろなオーダーを受けるたびに、その地域の文化もあるし、人によっても考え方が違うものだなあと思う。

日本ではお骨を長く家に置いたりすることもよくあるから、このような改葬という仕組みが可能なわけで、欧米や、土葬の多いイスラム地域ではたぶん奇異に映るんじゃないか。アジアの仏教国でもお骨を家に置いておくという風習はあるのだろうか。気になっているテーマである。