携帯のパスワード

コロナ中の出来事の話。以前働いていた職場の上司が亡くなったと、人づてに連絡があった。旅行先の不慮の事故。まだ現役バリバリだった。

葬儀は家族葬で行われ、半年ほどしてから、当日の職場のメンバーと一緒にご自宅に伺った。突然死はむごいもので、奥様の心はぽっかり空いたままだった。会社の上司の奥様とまさかこんな形で初めてお目にかかるとは思いもしなかった。せめてもの思いで、職場でお世話になったこと、当時の思い出をお伝えした。今でもいつかひょっこり帰ってくる気がしています、と涙ながらにお話されていて、とても辛かった。

奥様が、ご主人の携帯電話のパスコードがいまだに分からずじまいで、たくさん写真も撮っていただろうに見れずにいると言っていた。

高齢による死や、若くても病気が進行し死を迎えるかたちであれば、まださよならの準備ができるが、突然死はそれがない。残酷である。

私たちは携帯やパソコンなどの数多くのデジタル機器に囲まれているが、その人が死亡してしまうとアクセスできなくなるものも多い。その奥様が言っていたが、パスコードは業者に頼んでも永久に解錠は無理だそうだ。

家族やパートナーといった親密な関係なのであれば、いざというときのためにこういった情報は共有しておいたほうが遺族の悲しみは少なくて済む。

高齢者はとくに、早めにそういったパスワード関連は整理しておき、信頼のできる相手に伝えておくことが大事だと思う。


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花村みのり
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