
日曜劇場『海に眠るダイアモンド』第5話──家族の形と呪われた愛の行方
TBS日曜劇場『海に眠るダイアモンド』第5話が放送され、物語はいよいよ核心へと迫る展開を迎えた。端島の炭鉱労働者たちのストライキから始まり、現代パートでは家族のルーツを巡る探索が進む。登場人物たちの隠された想いや葛藤が少しずつ明らかになっていく回となった。
現代。いづみ(宮本信子)の家に、DNA鑑定の結果が届く。はたしていづみと玲央(神木隆之介)に血縁関係はあるのか。次々と明らかになる真実。2018年に生きるいづみは一体誰なのかーー?
1958年12月。「全日本炭鉱労働組合」の意向に従い、一平(國村隼)や進平(斎藤工)たち鉱員は、期末手当の賃上げを求める“部分ストライキ”を行なおうとしていた。しかし鉄平(神木隆之介)たち鷹羽鉱業側は、鉱員たちの要求を退け、鉱山のロックアウトを実施。ロックアウトされると賃金自体が出ないため鉱員たちは生活に困るのだ。
父や兄、そして家族同然に思う鉱員たちと対立するという不本意な事態に、労働組合制度の仕組みに疑問を持つ鉄平。そして鉱員たちの間では、ロックアウトを選択した炭鉱長の辰雄(沢村一樹)への不満が蔓延していた。
そんな中、リナ(池田エライザ)は進平に、自身の悲しい過去を語り始める。
「一島一家」──島全体がひとつの家族だった時代
炭鉱の島・端島では、労働者同士の結束が強く、島全体がまるでひとつの家族のように機能していた。しかし、それは表面的なものにすぎず、労働者と会社側の間には見えない溝があった。ストライキが起こる中、鉄平が骨折してしまい、片手で腕章をつけることができずに朝子のもとを訪れるようになり、微笑ましい二人の時間が描かれる。
しかし、百合子から賢将が朝子を想っていると聞いたことで、鉄平はその訪問をやめてしまう。この小さな決断が、後に二人の運命を大きく変えることになる。
また、島での労働環境の違いが身分の差を生み、子ども時代には気にもしていなかったものが、大人になるにつれて壁となる様子も丁寧に描かれた。かつては何気なく一緒に食べていたカレーも、立場が変われば遠い存在になってしまう。
「カレー、食べないのか?好きなんだろ?」という父の問いかけに対し、賢将が感じていたのは単なる食事ではなく、鉄平の家族と一緒に過ごす時間そのものが好きだったという切ない事実だった。
「私、呪われてるの」──愛した人を失う宿命
リナが「私、呪われてるの」と語る場面は、第5話の中でも特に印象的だった。最初の恋人は事故で亡くなり、次の恋人はヤクザに殺された。幸せになりたかっただけなのに、愛した人はみんな死んでしまう。そして、進平もまた、炭鉱火災の影響を受けて命を落としてしまう。
この場面では、進平が初めて英子の死を口にする。愛する人を失ったリナの前で、彼自身もまた愛する人の死を受け入れる。これまで心の奥底に封じ込めていた感情が、リナという存在によって少しずつ溶かされていくような瞬間だった。
「付き合ってよ」──賢将と百合子の想い
「私は一生誰とも結婚できない、付き合うこともできない」──百合子が涙ながらに語ったこの言葉には、原爆の影響を恐れる彼女の深い苦しみが込められていた。自分が被爆していることで、未来の伴侶や子どもに影響が出るかもしれない。その不安が彼女を孤独に追いやっていた。
そんな百合子に対し、賢将は「付き合ってよ」と静かに告げる。「今度は俺に付き合ってよ、暇だし」──この言葉の裏には、彼女を受け止めたいという優しさと、ただの同情ではない真剣な想いが込められていた。百合子がずっと抱えていた恐れや孤独が、この瞬間だけは少し救われたように感じられた。
進平の罪が、朝子と鉄平の運命を変える
第5話では、過去と現在の時間軸が交錯しながら、ひとつの事件が浮かび上がってくる。ヤクザが襲いかかり、進平は正当防衛として戦い、銃で撃ち殺してしまう。
「死体はあがらん。俺はよう知っとる」という進平の言葉は、英子の遺体が決して見つからなかったという過去とリンクし、視聴者に強烈な衝撃を与えた。
この事件が朝子と鉄平の運命をどう変えていくのか、視聴者としても見守るしかない展開となった。
「いづみさん、どれ?」──ついに明かされる正体
現代パートでは、図書館で鉄平の記録を調べる孫たちの姿が映し出される。3人揃っているかのように見えた孫たちだったが、DNA鑑定の結果、玲央は鉄平の孫ではなかったことが判明する。周囲は「似ている」という理由でいづみ家に招くが、実際には鉄平とはまったく似ていないという、どこか滑稽な構図が浮かび上がる。
そして、ついに「いづみ」の正体が明かされる──
それは「朝子」だった。
おばあちゃんの旧姓としてずっと伏せられていた「いづみ」。それが朝子の名であることが明らかになったことで、過去と現在が繋がる衝撃の展開となった。
第5話では、愛する人を失う呪い、労働者と経営者の見えない壁、そして過去の罪と現在の贖罪が交錯する重厚なストーリーが描かれた。鉄平と朝子の運命はどうなるのか? リナが追われる理由とは? そして、いづみ=朝子の正体が明らかになった今、現代パートはどのように動いていくのか?