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『海に眠るダイアモンド』第4話──過去と現在が交錯する、愛と贖罪の物語


TBS日曜劇場『海に眠るダイアモンド』の第4話が放送され、物語はますます深みを増している。戦時中と現代、ふたつの時間軸が交差しながら、人々の隠された想いや過去の罪が少しずつ明らかになっていく回となった。
1958年7月。朝子(杉咲花)の初恋の人が自分だと知って以来、朝子のことが気になり、浮き足立つ鉄平(神木隆之介)。そんな鉄平を尻目に賢将(清水尋也)は、何か思うところがある様子で…。
その頃、リナ(池田エライザ)のもとを訪れた進平(斎藤工)は、部屋である衝撃的な物を目にしてしまう。
一方、映画館を辞めて労働組合の新聞編集者としての仕事に精を出していた百合子(土屋太鳳)だったが、長らく体調を崩していた母・寿美子(山本未來)の容態が悪化する。鉄平は、百合子の家族の運命を変えてしまった、1945年8月9日の出来事を思い出していた――。
現代。いづみ(宮本信子)から「一緒に会社を潰そう」と提案された玲央(神木)は、社長であるいづみの第二秘書として雇われることに。突然の出来事に戸惑う社員たちを前にいづみは、玲央のことを「次期社長候補」だと紹介する。
そんな中、いづみの家族たちの間で、玲央に関するある疑惑が持ち上がる。

公式HPより引用

和尚の安定感、そして恋のキューピッド?


物語の中で、さだまさし演じる和尚が放つ言葉の重みは、まるで長年そこにいるかのような安定感を感じさせる。彼なりの人間観察の鋭さと、静かに見守る立場からの温かさがにじみ出ている。

そして、知らず知らずのうちに登場人物たちの関係性を後押ししている点では、まさに恋のキューピッドとも言える。

百合子の心に秘めた過去、朝子との距離


これまで冷たく映ることの多かった百合子が、朝子に対して抱く複雑な感情の理由を、朝子は日記を通して知ることになっただろう。それは、彼女自身が避けたかった記憶でありながら、朝子の何気ない行動によって戦争の悲劇に巻き込まれてしまったという運命の残酷さだった。

「母を亡くして、悲しくはない」という百合子の言葉は、決して冷たいものではなく、むしろ悲しみすぎた結果としての感情の麻痺なのかもしれない。

そして、百合子の強がりを理解した賢将が、台風の日に拾ったペンダントを手渡すシーンは、百合子の心が揺れ動く瞬間を見事に表現していた。人知れず涙を流す百合子を、大きな体でそっと隠す賢将の優しさが際立つシーンだった。

リナの決意と、進平の罪


戦時中のパートでは、進平が戦場で生き延びるために何をしたのか、その一端が語られた。「絶対に死んでやるもんかって。なんとしてでも生きてやり直したかった。幸せな人生が欲しかった」というリナの言葉には、戦争が奪ったものの大きさと、それでもなお生き抜くことを選んだ者の強さが滲む。

一方で、鉄平の父が語る「偉い人はみんな生き残ってる、偉くなればいい」という言葉には、時代の中での生存戦略としての教育の重要性が込められていた。鉄平が大学へ進学した理由、それを望んだ父の気持ちが、より明確に描かれる場面でもあった。

「神も仏も何もしない」──戦争の記憶と贖罪


爆弾を落とした者も、被害を受けた者も、同じ神を信じていた。しかし、神は何もしてくれなかった。鉄平の父の言葉が突き刺さる。戦争が終わっても、それを経験した人々の中では決して終わらない──そんなメッセージが、この回では強く描かれていた。

そして、過去の罪は消えない。聖霊流しの花火が現代パートでも上がることで、「過去の過ちは本当に消えなかった」ことが象徴的に示されている。

来年もここで──「はしまの掟」


島を去ろうとするリナ。そんな彼女に、進平が語る「はしまの掟」。精霊流しのお供え物をこっそり奪う6人の姿には、どこか子ども時代の無邪気さが残る。そして、「お供えを食べたら、来年返さなきゃ」という、進平の言葉。ありもしない掟ではあるが、「また来年もここにいてね」という思いが込められているのが伝わる、温かくも切ないシーンだった。


ラストでは、3話で映画監督がカメラに収めたリナの姿がクローズアップされる。果たして、それが何を意味するのか──彼女が背負ってきた過去、そして未来への希望がどう繋がるのか、次回への期待が高まる終わり方だった。

第4話は、過去の悲劇と現在の贖罪を繊細に描いた回だった。戦争という歴史の中で傷ついた人々の心情が、現代にどう影響を与えているのか。来週、物語はどんな展開を迎えるのか、ますます目が離せない。

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