掌編怪談「鏡」

父が潰れたホテルから鏡を買ってきた

リビングに飾られたその鏡を私はかなり気に入った

毎日眺めていたが、マジックミラーの見分け方を知ってからは毎日触るようになった

普段は人差し指で触っていたが、何となく両手の平で鏡に触れてみる

手の平から温もりを感じる

手に伝わる感触も鏡のそれではない

鏡を見ると、そこに写る手が私の手と触れあっていた

それを認識したと同時に後退りをするが手が鏡から離れない

どんなに力を入れてもびくともしない

焦った私は鏡に思い切り頭突きをした

破片と一緒に鏡から手が離れる

額から血が流れる

鏡は粉々に砕けていた

未だリビングには鏡のフレームが飾られている

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