掌編怪談「心知らず」
親知らずが虫歯になったので、上下一本ずつ抜歯した
それから悪夢にうなされるようになった
初めは抜歯による腫れやストレスで悪夢を見ているのだと思っていたが、腫れが引いても変わらず夢を見る
見る夢は全て同じで、二人の子供に責め立てられると言う内容だ
かれこれ二週間もまともに寝ておらず
心身ともに限界が近い
トボトボと帰路を歩いていると声をかけられた
見るとホームレスの男性が座っていた
あんた、最近疲れてるだろ
そう言われたが、関わりたくないのでスルーしようと一歩踏み出す
男女の子供が二人、あんたに纏わり付いてるよ
驚いて詳しく話を聞く
夢の子供達は前世の私の子供で、親子三人流行り病で亡くなった
亡くなる直前、子供達は来世でもお母さんの子供になると約束した
それが何の手違いで、親知らずとして私の歯に縛られていたらしい
せっかく一緒になれたのに、拒絶するように引き離すから怒っているとの事だ
どうしたら言いかと聞くとアドバイスをくれたのでいくらか御礼を渡した
帰宅すると早速抜歯した歯を一本は屋根に、一本は地面に埋めた
それから悪夢は見なくなった
だが私は同性愛者だ
今世では子供達と再開することは出来ない
ごめんね
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