体験談「共有」
大学生の頃の体験談だ。
地元の友人二人と深夜のドライブがてら心霊スポットに行こうという話になった。
スマホで調べ、地元から少し離れた場所にある公園に向かった。
以前は火葬場だった場所で、生きたまま人が焼かれたらしい。
跡地となった公園では、その焼かれた人が出るという曰くがある。
公園は半円形に広がっており、入口側は広場で奥側が林となっている。
広場と林の境目付近には銅像が建っていた。
広場には何も無さそうなので林を時計回りに探索することにした。
林には道があり、その道に沿って雑談しながら進むんでいると、少し開けた空間がみえてきた。
そこは椅子とテーブルが置いてある。
恐らく休憩スペースだろう。
その空間を休憩スペースだと認識した直後、道と休憩スペースの境目に赤い鳥居が現れた。
あれ?と思ったが無意識に瞬きをしてしまい、目を開けたときには鳥居はなくなっていた。
鳥居があったところには少し歪な生え方をした木が立っていた。
先ほど見た鳥居の笠木や貫と重なる部分には、一本の太い枝が地面とほぼ平行に伸びており、鳥居の柱と重なる部分にはその枝を支える木の幹があった。
気のせいか見間違いだと思い、友人には伝えなかった。
今そこに鳥居なかった?
前を歩いていた友人の一人が休憩スペースの方を指差してそんなことを言った。
驚きつつも自分も鳥居を見たことを伝える。
木と重なった位置にみえたと言うのが一致した。
それ以外は何も起きず、時間が遅かったのでその日は帰宅した。
それから数年後にこの事を思い出し、鳥居を見た友人に鳥居は何色だったかを確認すると赤だと答えた。
鳥居には赤のイメージがあるので、そんなに驚きはしなかったが、同じものを見た可能性は高いだろう。
幽霊を見たり、呪われたりしたわけではないので怖くもなんともなかったのが少し残念ではある。
ただ、怪奇現象ではない可能性もあると考えている。
鳥居を見たのは付き合いが長く、仲のいい友人だ。
脳からの電気信号、或いは感覚が似ていたため同じ幻覚を見ただけかもれない。
これが今のところ唯一の不思議体験だ。
その公園はT県に今も存在する。