掌編怪談「傷」

どこで怪我したのか

弟の右の太ももに小さな傷がうっすらと出来ていた

少し血は滲んでいるがほっとけば治るだろうと思い、処置はしなかった

翌日確認すると一つだった傷が五つに増えていた

不思議なことに傷は等間隔に並んでおり、何となく弧を描いているように見える

日を追うごとに傷は深く大きくなり

その数も増えていった

右の太ももに止まらず、今では全身に同じ傷がある

原因は分からず、治療の効果もない

そんなある日、弟は突然いなくなった

血溜まりと少しの肉片を残して

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