掌編怪談「過涼」

夏は帰宅するとすぐにシャワーを浴びるようにしている

涼をとるためにも温めのシャワーで汗を流す

シャワーを止め、髪の毛をシャンプーで洗う

温度を下げすぎたのか、肌寒くなってきた

なので温度を上げ、シャンプーを洗い流す

温まったので体を洗い始めると、また寒くなってきた

風邪を引いたのかもしれない

どんどん体が冷えるので、急ぎシャワーを浴びる

シャワーはとても温かい

だが浴室内が寒いのか、体温は下がる一方

気のせいかもしれないが床が異様に冷たい

シャワーヘッドもお湯を出しているのにも関わらず、持っていられないほど冷たい

外気を取り込もうと窓を開けると、外は吹雪いていた

急ぎ窓を閉じ、シャワーを止めると勢いよく浴室から出る

脱衣所は夏の室内といった温度で安心した

歯の根が合わないほどに下がっていた体温も少しずつ戻ってきた

扉を開けたままの浴室を見るが、先程の異様さは感じられない

不思議と冷気も漏れてこない

恐る恐る中に入るが、先程の寒さが嘘のように床もシャワーヘッドも窓の外にも異常が見られなかった

翌日、熱が出た

昨日の出来事のせいで風邪を引いたのか、はたまた風邪で頭がおかしくなっていたのか

以降は毎日欠かさず風呂を沸かしている

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