ミ正不
こっそりと近づき、背後に立つ。
ランドセルの留め具の錠前を回し、静かにベロを外す。
そして勢いよく肩を叩く。
おはよう悠人!靴紐がほどけてるぞ
僕が挨拶を返すのを待たずに友人が指摘してくれた。
靴をみると確かに紐がほどけている。
ありがとうってお礼を言って、靴紐を結ぶために屈まずに立ったまま腰を曲げる。
背負っているランドセルの冠(かぶせ)が頭に当って、教科書とノート、筆箱が地面に散らばっちゃった。
いつも下校の時にみんなで遊ぶイタズラだったから油断してた。
レンレン酷いよ。朝から仕掛けてくるなんて思わなかったよ。
悪い悪い。でも靴紐がほどけてた悠人が悪いよなぁ、あれじゃあイタズラしてくれって言っている様なもんじゃんか
レンレンは満足そうな笑顔で僕の荷物を拾うのを手伝ってくれた。
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その日の放課後。
僕はいつも通りレンレンと2人の友達と一緒に下校していた。
朝のことは忘れてない。
ちょっとした復讐のつもりで、僕もいつもと違うタイミングでイタズラをすることにした。
レンレンは途中から僕らと帰り道が別れる。
バイバイと手を振り一人歩いていくレンレンの背中に、ちょっと待ってと声をかけて駆け寄る。
僕はレンレンの耳に口を近づけ、小さな声で
あのね、こしょこしょ
と言った。
何かあるのかと思ったらそれかよ
レンレンは笑いながら僕にツッコミを入れてくれた。
僕がランドセルの錠前を回してベロを外したのはバレなかったみたい。
また明日ねと、手を振って別れた。
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俺はみんなと別れて一人で下校していた。
いつもの路地を抜けたところで、道路を挟んで反対側の路側帯を同じクラスの光紀が一人で歩いているのを見つけた。
おーい光紀!
俺は大声で名前を呼び、手を振りながら歩道のガードパイプのギリギリまで近づこうと走ろうとした。
走ろうと一歩足を踏み出すと、靴紐を踏んでしまい、派手に転んでしまった。
その拍子に、何故かランドセルが開いて教科書やノートが散らばり、車道に筆箱が転がっていった。
キィーという甲高い音が聞こえ、その直後ドンッと大きな音が聞こえてきた。
ランドセルの冠が視界を覆っていたが、車が事故を起こしたと用意に想像できる。
急いで立ち上がり、道路を見る。
シルバーのワンボックスカーが民家の塀に突っ込んでいる。
その光景をボーッ眺めていた。
警察と救急車を呼べ
焦ったような男性の怒鳴り声で我に返り、周囲を見渡す。
車道には俺の筆箱が変わらず転がっている。
先程の声の主である40代くらいのおじさんが車に駆け寄って運転手の救助を始めた。
歩道にいる女子高生は電話をしていて、話の内容から警察や救急に電話をしているようだ。
そう言えば光紀がいない。
俺は足元に散らばった教科書とノートをランドセルに仕舞い、光紀を探しながら車道にある筆箱へと近づき、拾おうと手を伸ばす。
うおっ!車と壁に女の子が挟まってるぞ!誰か手伝ってくれ!
救助しているおじさんの叫び声が聞こえて体が固まった。
もしかして、光紀が…。
そんなことないと筆箱を拾うのを忘れて車へと駆け寄った。
おじさんと大学生位のおにいさんが救助しようとしているのは腕と足が明後日の方向に曲がり、頭と口から血を流した光紀だった。
俺の視界がグニャリと歪んだ。
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俺が目を覚ましたのは病室だった。
窓から見える景色の全てがオレンジがかっており、今が夕方なのが分かる。
目を覚ました俺をママは優しく抱き締めてくれた。
ママ、光紀が車に轢かれて…
震える唇で絞り出すように言葉を紡ぐ。
大丈夫、無理に話さなくていいの。今日はゆっくり休みなさい
落ち着いた口調でママは俺に優しく声をかけてくれた。
翌朝、俺は悲鳴をあげて目を覚ました。
呼吸が荒く、体も震えている。
覚えてはないがすごく怖い夢を見た気がする。
ママはそんな俺をまた抱き締めてくれた。
朝御飯を食べ終わると二人組の警察官が病室を訪ねてきた。
事故の事で知っている事を聞きたいとの事だった。
俺は知っている事をありのまま話した。
すると警察官の二人が小声で何かを話し、ママを連れて三人で病室を出ていってしまった。
話すためとはいえ昨日の事故を思い出すのは、やはり怖い。
目を瞑るたびに血塗れの光紀の顔が瞼の裏に貼り付く。
静かに涙を流して布団を被っていると病室の扉が開く音がした。
布団から目だけを出すと警察官はおらず、泣き顔のママが立っている。
光紀ちゃん、今朝息を引き取ったそうよ
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僕は光紀ちゃんの事が大好きだった。
でももう話すことも遊ぶことも出来なくなっちゃった。
光紀ちゃんは車に轢かれて死んじゃったんだ。
事故の現場にはレンレンがいたらしい。
理由は分からないけどその日からレンレンは学校に来てない。
今日は光紀ちゃんのお葬式だけどレンレンは来てないみたいだ。
クラスメイトと先生はみんな泣いてる。
でも僕は涙が出なかった。
お葬式が終わってクラスメイトは先生と一緒に学校に戻る事になった。
僕は何となく葬儀場に座ったまま笑顔の光紀ちゃんの遺影を眺めていた。
すると扉の外から会話が聞こえてきた。
交通事故なんですってね
えぇ、その事故の現場をうちの近所の光紀ちゃんが目撃していたらしいのよ
そうなの?事故の状況とか聞いた?
もちろんよ、歩道を歩いていたら前の方で小学生の男の子が転んだのが見えたんですって。そしたら急に車が曲がって壁にぶつかったらしいのよ。
あら、その小学生の子に驚いてハンドルきっちゃったのかしら
それが違うみたいなの。彩里ちゃんが周りを見渡すと転んでた男の子が車道に落ちてる筆箱に手を伸ばしていたらしいのよ
えっ、じゃあ転んだ子の筆箱が道路に転がったからそれを避けたってこと?
何してるの悠人君。
聞き耳を立てて話を聞いていた僕は急に名前を呼ばれてうわっと情けない声をあげた。
振り返えると、担任の高木先生がいた。
みんな外で待ってるから行くよ
うん、と返事をして高木先生と手を繋いで葬儀場を出た。
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僕はベッドの中で部屋の天井を見ながら葬儀場で聞こえた会話を思い出していた。
小学生が転んだ
急に車が曲がって壁にぶつかった
転んだ子の筆箱が道路に転がったからそれを避けた
何でかは分からないけどこの三つの言葉が頭の中でぐるぐるしている。
どんなに考えても分からない。
そう言えば光紀ちゃんとの最後のお別れなのにレンレンは来なかった。
事故の現場にいたレンレンなら何かわかるかな
そう呟いて、頭から布団を被った。
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キーンコーンカーンコーン
光紀の事故から一週間経った。
昨日まで俺はあまり眠れていなかった。
夢に血だらけで腕と足が変に曲がった光紀が出てきて、そのたびに絶叫と共に目が覚める。
そんな状況だったので昨日は病院に行って薬をもらった。
その薬のおかげで昨日はしっかりと眠れた。
光紀のお葬式に出られなかったので、今日の午前中にママとお墓参りに行き、午後から学校に登校した。
久しぶりの教室はいつもより少し静かで、窓側の一番後ろにある一脚の机の上に置かれた花瓶には一輪の花が生けられている。
俺は俯きながらクラスの中央にある自分の席に真っ直ぐ向かった。
俺は誰とも話さずにその日の授業を終えた。
放課後、一人で教室を出ようとする俺に悠人が話しかけてきた。
一週間も休んでたから心配してたよ。具合が悪かったの?
いつもよりも少し暗い声音の悠人の質問に俺はただ「うん」と言う返事しか出来なかった。
そっか、でも光紀ちゃんとの最後のお別れなんだしお葬式には来ればよかったのに
そうだよね、でも今日の午前中にママと一緒に光紀ちゃんのお墓参りに行ってきたよ
そうなんだ、だから午後から来たんだ
うん
今度は一緒にお墓参り行こうね
うん
俺が進んで話をしないせいか会話が途切れて二人とも黙ったまま、いつも別れた道に着いた。
じゃあ、俺こっちだから。また明日
そう言って軽く手を上げて自分の帰り道を歩き出す。
ねぇ、レンレンが光紀ちゃんの事故の現場にいたって本当
歩き出した俺の背中に投げ掛けられた言葉に、俺は体をビクッと肩を震わせゆっくりを振り返る。
お葬式の時に誰かが話してたんだけど事故の時に転んだ子がいたんだって。その子が転んだ時に筆箱が道路に転がって、その筆箱を避けた車が壁にぶつかったんでしょ?それで光紀ちゃんが死んじゃったんでしょ?
俺の頭は真っ白になった。
そんな話、聞いてないよ。
転んだ子って俺の事だ、道路に転がった筆箱は俺のだ。
じゃあ、光紀は俺のせいで死んだってことじゃん。
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僕が質問したらレンレンの様子がおかしくなった。
身体が震えだしたと思ったら息が激しくなって、大きな声で泣きながら地面にうずくまった。
どうしたらいいのか分からなくてオロオロしてたらレンレンのお母さんが家の方から走って来た。
レンレンのお母さんはレンレンを慰めながら僕に何があったのかを聞いてきた。
話してたら急に泣き出したんだ
って僕が答えるとレンレンのお母さんは僕に早く帰りなさいって言って、レンレンを抱っこして家の方に歩いていっちゃった。
僕はお風呂に浸かりながらレンレンの事を考えてた。
僕、変なこと聞いちゃったかな?レンレンが泣いてるところなんて初めて見た。明日謝らなくちゃ
お風呂に口まで浸かって、鼻で吸った空気を口からブクブクと吐き出す。
そう言えばレンレンの筆箱が新しくなってたな
息を吐ききったからまた鼻から息を吸おうとすると鼻に水が入ってむせちゃった。
ゲホゲホと咳をする。
咳が落ち着くと少し頭がボーッとしているのに気づいた。
ちょっとのぼせたのかもしれない。
でもボーッとするのはなんだか気持ちいなぁ。
光紀ちゃんともっと遊びたかったなぁ…。転んだ子って誰なんだろ。小学生なら同じ学校の子かな?明日レンレンに謝ってから聞いてみようかな
悠人、いつまで入ってるの?のぼせるからそろそろ出てきなさい
はーい
僕は湯船からあがると少し冷たいシャワーを頭から浴びてあったまった身体を冷やす。
そしてお風呂場から出て脱衣場でふわふわのタオルで体を拭く。
レンレンの筆箱が新しくなったのって前のが壊れたってことかな?でも学校ではそんな感じしなかったけどな
身体を拭き、髪の毛の水分をタオルで拭く手の動きがゆっくりになって、そのまま止まった。
もしかして、レンレンが筆箱を新しくしたのって落として壊したから?光紀ちゃんが死んだ事故の現場で?
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俺はまた一週間学校を休んだ。
気がつかなかった、ランドセルでその瞬間は見ていなかった。
だから自分のせいで事故が起き、その事故で光紀が死んだなんて思わなかった。
ママは病室に警察官が来た時にその事を聞いたらしい。
警察は運転手の証言とドライブレコーダーから事故の原因を割り出していたようだ。
ママと警察官は俺がその事を知るとショックを受けるだろうからと黙っていたらしい。
実際、悠人の話を聞いて俺はまた学校に行けなくなってカウンセリングを受け、引きこもっていた。
ママとカウンセラーは無理に学校に行かなくていいと言ってくれた。
パパは無理に行く必要はないけど友達といた方が気が紛れるだろうから学校に行った方がいいんじゃないかと言ってくれた。
俺はパパの意見に従ってまた一週間ぶりに学校に行った。
あの事故から二週間。
クラスは事故の以前の活気を取り戻しているようにみえた。
理由は分からないが花瓶の置かれていた机はなくなっており、そのことに気がつくと吐き気に襲われてトイレに駆け込んだ。
登校したのが遅刻ギリギリの時間だったため、教室に戻ると朝の会が行われている。
深呼吸をしてから教室の後ろから入室する。
ガラガラとうるさく鳴り響く扉の開閉音で皆が一斉に振り向く。
おはよう、蓮君。席について
高木先生の挨拶に俯きながら頷き、自分の席に座わった。
授業中は何も感じなかったが、授業の合間の5分の準備時間に誰も俺に話しかけなかった。
いつもなら誰かしら声をかけてくれるのに。
あまり気にしないことにしてトイレに行くとあっという間に授業の時間になった。
行間休みの時間になり、殆どのクラスメイトが急いで外に向かう。
いつもの光景。
だけど誰も俺に声をかけてくれない。
声をかける間もなく走っていってしまった。
外に出なかったクラスメイトも他のクラスなどに行ったようで教室に俺一人になっていた。
少し違和感を感じるが、誰もいない教室が今は都合がいい。
俺は校庭に見える活気に溢れる世界をボーッと窓から眺めていた。
午前中の授業が終わり、給食の時間。
いつものように給食の班ごとに机の向きを変えてくっつける。
給食係が配膳台の用意し、給食の入った鍋やおひつ等を運び、配膳を始める。
班ごとに配膳台に並んで給食を受け取り、席につく。
いただきます
先生の号令と共に皆が食事を始める。
悠人、この前は迷惑かけてごめん
悠人と同じ班なのでこの前のことを謝った。
ううん、僕は気にしてないよ。それよりも今日はこの前より元気がないね。大丈夫なの?
うん、心配かけてごめん
学校での今日初めての会話だったが、それからはいつも通りの日常に戻った気がした。
帰りの会が終わり悠人達と下駄箱に向かう。
上履きと靴を履き替えようと下駄箱の扉を開けると二段組の上部、普段上履きを置いている上の段に紙片が置いてあった。
何かと思い靴を床に置き、紙片を空いてる手で取って上履きをしまう。
紙片を裏返すと「人殺し」と曲線の無い文字で書かれていた。
俺は下駄箱の扉を勢いよく閉めた。
バタンと大きな音が鳴り、皆がどうしたのか聞いてくる。
ごめん、なんでもないよ
ひきつった笑顔を浮かべつつも何とか誤魔化し、バレないように紙片をポケットに突っ込んだ。
帰宅するとママに今日の学校はどうだったか聞かれた。
切れ端の事が頭に過るが、いつも通りだと答えて部屋に向かう。
蓮!あんた何付けてるの!
俺の背中にママが絶叫にも似た怒鳴り声をあげると俺のランドセルに何かをした。
ベリッと何かを剥がすような音が聞こえたかと思うと、ママはノートの切れ端を手にしていた。
こんなのがあんたのランドセルに貼られてたわよ!
ノートの切れ端には「僕は人殺しです」と書かれていた。
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レンレンはマンションから飛び降りて死んだ。
レンレンの部屋に「ごめんなさい、死んで償います」って書かれたノートがあったらしい。
お葬式は明後日です。光紀ちゃんの時と同様、放課後にお葬式への出席の確認するためのプリントを配るので、親御さんに確認してもらって明日の朝に提出してください
朝の会で高木先生がハンカチで涙を拭きながら話してた。
みんな泣いてるみたいで、鼻をすする音や嗚咽が聞こえてくる。
僕は机に突っ伏して肩を震わせていた。
笑いが止まらない。
やっと死んだ。思ったよりも時間かかったなぁ
誰にも聞こえないくらいの小さな声で呟く。
僕は光紀ちゃんを殺したレンレンを許せなかった。
だから死ぬまでいじめることにしたんだ。
やった事は単純で、バレないようにイタズラをしただけ。
「人殺し」って書いた手紙を渡したり、貼り紙したり、ノートに落書きしたり、靴に画鋲や虫を入れたり、椅子や机を濡らしたり、給食に虫を入れたり、体操服を汚したり、宿題を捨てたり、鉛筆の芯を抜いたり、部屋の窓に石を投げたり、旅行先から「人殺し」って書いた手紙を送ったり、公衆電話で無言電話かけたり色々したよ。
あとは光紀ちゃんとの思い出をみんなでたくさんお話しした。
毎日、休み時間のたびに。
レンレンは少しずつおかしくなったよ。
一人になろうとするから皆で声をかけてあげた。
しばらくするとすぐに怒ったり泣いたりするようになった。
そして昨日の下校の時も怒って僕達に暴力を振るってきた。
だから僕はそろそろだと思って暴れるレンレンに後ろから抱きついて、耳元で小さな声で言ってやったんだ
光紀ちゃんを殺した癖に、この人殺し
この時のレンレンの顔は面白かったなぁ。
バッてこっちに振り向いたら、顔を涙と鼻水でぐしゃぐしゃにしててね
お前が死ねば良かったのに
って言うと顎がガクガクしたと思ったら僕を振り切って叫びながら走って帰っちゃったんだ。
思い出すだけで笑みがこぼれる。
お母さんに学校で配られたレンレンのお葬式についてのプリントを渡した。
お母さんはプリント受け取って内容を確認する。
悠人、あんた何で笑顔なの?何がおかしいの?
あっ
僕は思わず両手で顔を隠す。
蓮くんが亡くなったのが嬉しいの?
何か嫌なものを見ている様な表情でお母さんが聞いてくる。
うっぶっ うれしいっぶっ わけぶっ ないじゃん ふふふっ わはっはっっ
我慢ができずなくて吹き出して、高笑いになっちゃった。
パァン
お母さんのビンタが僕の笑いを止めた。
なんなのあんた!おかしいんじゃないの!
お母さんは僕を怒鳴り付けるとスマホをもって寝室に行っちゃった。
僕はジンジンと痛む頬を擦ってたけど口角が上がるのは止められなかった。
その日の夜は両親の寝室から話し声がずっと聞こえてた。
学校へはお葬式に出席するとプリントに書いて提出した。
お葬式当日、両親は僕はお葬式に出ないって学校に連絡した。
僕もレンレンにも最後のお別れをしたかったのに、レンレンの両親にも話したいことがあったのに、残念だなぁ
そう呟く僕をお父さんは殴った。
友達が亡くなったと言うのに何でお前はヘラヘラしてるんだ!そんな笑ってるやつを葬式に行かせられるか!
僕はまたニヤけてたらしい。
お母さんが止めてくれて、今から病院に行こうってことになった。
両親は僕がおかしいって気味悪がっているみたいで精神科に連れてかれた。
過度なストレスに晒されると感情がうまく表現出来なくなる場合があります。悠人くんはその可能性が高いと思います。なので悲しい時は泣いていいんだよって言うのを教えていくのと、笑いたくて笑ってないんだよって言うのを周りの人に伝えていくのが大事だと思います。
お医者さんの話を聞いて両親はホッとしているみたい。
いずれは治るのでしょうか?
治るかは分かりませんが改善出来るものなので気長に様子を見ましょう
葬儀の後、何日か経った後に僕と両親は学校に呼び出された。
どうやらレンレンは親にイタズラの事を相談してたみたい。
家に手紙送ったりランドセルに貼り紙したりしてたからイタズラがバレて当たり前か。
死んじゃった日、レンレンは自分が光紀ちゃんを殺したことを僕が知ってるって親に話してたみたい。
お前が蓮をいじめて自殺に追いやったんだろ!
レンレンのお父さんの怒鳴り声にびっくりした。
でも何故か笑いが込み上げてくるのを我慢できなかった。
ぶっはっひゃひゃひゃっー
僕のお父さんは笑うのを止めようと僕を殴り、レンレンのお父さんも僕を殴ろうと近づいてくるのを校長先生と高木先生が止めたりと、校長室は習ったばかりの阿鼻叫喚の光景だった。
それから両親が僕を見る目が変わった。
レンレンのお葬式の話の時と同じ、いやその時よりももっと確実な嫌悪を持った目で僕を見るようになった。
レンレンが死んじゃった事に対して慰謝料を支払うことになり、僕は頭がおかしいから病院に入れられることになった。
週に一度の面会にはお母さんだけが来てくれる。
専業主婦だったけど慰謝料の支払いのためにパートを初めたらしい。
忙しいのか疲れているように見える。
面会に来ても殆ど話さなくて、15分くらいで帰っちゃう。
病院はやることがなくてすごい退屈。
だから色々と考えてるんだ。
本当はね、僕は気づいてた。
僕がレンレンのランドセルにイタズラのせいで荷物が散らばった。
光紀ちゃんを殺したのはレンレンじゃなくて僕だったんだ。
僕が光紀ちゃんを殺したのにレンレンのせいにして、イタズラで追い込んで殺しちゃった。
お父さんの言う通りで僕はたぶん頭がおかしい、死んだ方がいいんだと思う。
だって、光紀ちゃんを殺したのに、レンレンを殺したのに、笑顔が、心から笑いが込み上げてくるんだ。
僕は光紀ちゃんもレンレンも大好きだった。
だから光紀ちゃんを殺した僕がレンレンも殺さないとダメだったんだ。
だからしょうがないよね。
しばらくして僕は退院した。
両親は変わらず蔑むような目で僕を見る。
気持ち悪いなぁ、そんな目で僕をみないで欲しいなぁ。
退院して3日後に僕はお爺ちゃんお婆ちゃんの家に預けられた。
地方とは言え、都市で育った僕には田舎は新鮮で楽しくて毎日山を、川を駆け回った。
何よりこんな僕にもお爺ちゃんとお婆ちゃんは優しくしてくれた。
それは近所の人達も同じだった。
お爺ちゃんとお婆ちゃんの事が大好きになった。
だからまたイタズラすることにした。
山や川には図鑑でしかみたことなかった生き物がたくさんいる。
それを婆ちゃんの料理の手伝いの時にこっそり混ぜた。
夕御飯を食べているとお爺ちゃんがゲロを吐いて倒れ、介抱しようと近づいたお婆ちゃんは急に苦しみだした。
僕の笑い声を聞いた隣の家のおばさんが様子をみに来て、倒れた2人をみると通報した。
お爺ちゃんもお婆ちゃんも死んじゃった。
お父さんとお母さんは僕を施設に入れた。
僕は僕を捨てた両親のことが好きじゃなくなった。
大好きだったのに残念。
イタズラには飽きちゃった。
次はアレをやろう
そう呟くと、自然と笑顔になった。
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