掌編怪談「ヒト」
実家は山の麓にある神社だ
山そのものを神域とし、立ち入りを禁じている
ここでは神としてヒトが祀られている
実在した人物や現人神などではない
稲荷神社のヒトバージョンだと言えば分かりやすいだろうか
もちろん神としての名を持っているが、まだ教えられていない
俺はいつかここを継ぐことになっている
でも絶対に継ぎたくない
子供の頃に一度だけ神様を見たことがある
長い髪と長い爪を持っており、一糸纏わぬその姿はただただ不気味だった
つい先日、歴代神主の写真を見る機会があった
先々代にあたる曽祖父の顔は、あの日見た神様と瓜二つだった
この神社は何を祀っているのだろうか
先代だったお爺ちゃんは行方不明になっている
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