掌編怪談「閉ざさずの襖」

我が家には閉じることが禁止されている襖がある

居間の横にある和室の襖で、部屋の中には何もない

入室は禁止されていないが、入ろうとすると何故か注意される

ある日の夜中、たまたまトイレに起きた時に思いつきで部屋に入り襖を閉じてみた

今まで気がつかなかったが襖の裏側には絵が描かれており、閉じることでその全体を見ることができた

襖を四枚使って描かれた合戦の様子は、細部にまでこだわりを感じる

突然、家中に法螺貝の音が鳴り響いた

襖の絵が動いたと思えば部屋中に蹄の音や人の叫び声、金属音が聞こえ始めた

呆気にとられていると襖が勢い良く開け放たれ、そこにいた父に思い切り顔を殴られた

いつの間にか合戦の音は聞こえなくなっていた

父に襖の事を質問すると

はぁ

とため息を吐く

今回ので5人死んだ
ここは閉めるな

そう言った父は悲しそうな顔で襖の絵を眺めていた

翌日、学校で開かれた緊急集会で5人の生徒の訃報が伝えられた

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