掌編怪談「日本人形」

叔母が闘病の末、意識のない寝たきりの状態になった

末期癌であるため体が痛むのか

いつも険しい表情をしている

叔母には身寄りがない

そのため叔母の家を私が管理している

と言っても週一で掃除と郵便物の確認をするくらいだが

いつも通り掃除をしていると、普段は棚の上にあるはずの日本人形が床に落ちていた

何かの拍子に落ちたのだろうか

叔母が大切にしていたものだ

棚に戻して掃除を終えた

翌週、掃除に来ると誰がやったのか

浴槽に水が張ってあり、日本人形が浮かんでいた

浴槽から取り出してタオルで拭く

ドライヤーで乾かし、髪を梳かす

人形の右手首が切れている

掃除中、カッターが落ちていたのを思い出した

誰かのイタズラだろうか

その翌週、玄関を開けると同時に尻餅をついた

誰がやったのか

玄関に吊り下げてある裸電球

そこで日本人形が首を吊っていた

人形を降ろそうというところで電話が鳴った

出ると病院からで、叔母が危篤状態とのこと

人形をそのままに急いで病院へ向かう

病室に入ると叔母は既に亡くなっていた

痰が喉に詰まったことによる窒息死だそうだ

人形との奇妙な一致に寒気がする

日本人形は叔母の棺に入れてあげた


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