掌編怪談「身代わり」
弟が転んで膝を擦りむいた
私は怪我をした弟の膝に手を当てる
痛いの痛いのあのオジさんに飛んでけ
その言葉と同時に膝に当てていた手を通行人である知らないオジさんの方に向ける
すると弟の怪我はなくなり、オジさんは顔を歪ませながら自身の膝を触る
私は弟の怪我を他者に移すことができる
理屈は分からないが、姉弟だけの秘密の力だ
姉弟仲はかなり良く、しょっちゅう一緒に遊んでいる
今日は木登りをすることになった
身軽な弟は素早く上の方まで登ると、細い枝の上でジャンプしていた
注意したが止めず、遂に枝が折れてしまった
枝に身体を打ち付けながら落下し、地面に叩きつけられた
私はすぐに木から降りて駆け寄るが、弟は息をしていない
助けを呼ぼうにも町の外れにある寂れた公園のため、近くに人がいない
どうしようかと考え末、弟を助けるためだと覚悟を決めた
痛いの痛いの私に飛んでけ
私は激しい痛みを感じ、意識を失った
その公園で姉弟の死体が見つかった
姉の体には細かな傷と首の骨を含む複数箇所の骨折が見られた
しかし弟には外傷が見当たらず、死因が分からなかった
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