掌編怪談「テニス」
残業のため、終電での帰宅となった
家まであと少しと言うところで何か聞こえてくる
近所にはテニスコートがあり、音はそこから聞こえるようだ
薄暗いコートに人影があった
営業はとっくに終えているのに何事かと見ていると気づいてしまった
ラリーの応酬をしているのに人影が一つしかない
テニスコートに壁はなく、あるのはフェンスのみ
フェンスではあんなに風にボールが返っていくのはおかしい
人影はコートの端から端を往復している
左右交互に返球されているようだ
限界が近いのかハァハァと荒い息づかいが聞こえる
直後、人影が倒れボールがフェンスにあたる音がした
次の瞬間、絶叫が住宅街に木霊した
気がつくと警官に肩を揺すられていた
悲鳴が聞こえるという通報があり、駆けつけたようだ
警官曰く、叫んでいたのは俺だったらしい
テニスコートをみると人影はなくなっていた
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